マーケティング的ダイナミックプライシングの重要性:値引きや安売りに頼らない値引きの方法
◾️ 【初心者必見】ダイナミックプライシングとは?
値引きしないと売れない
値下げしても売れない
そもそも値決めが難しい
小売業、飲食ビジネス、ホテルなどの宿泊業、イベント集客のような消費者向けビジネスでは、いくらに価格設定をすればいいのか難しいと悩む経営者の方も多くいます。
まず、値引きしないと売れないと思っていませんか?セールのやり方次第では、売り上げを逆に下げてしまうリスクもあるし、価格を上げても売り上げが伸びることもあるのです。
需要に応じて、価格設定を工夫することで、難しい値決めの問題を解決できる方法があるのです。
それは、今注目されている"ダイナミックプライシング"という手法です。
◾️ ダイナミックプライシングの事例
ダイナミックプライシングとは、変動価格制のことです。
顧客の需要の度合いや市場の環境、時期的な要因など、状況によって変わる変数を考えに入れて、価格を変える仕組みです。
基本的には、需要が多い時または供給が少ない時(稀なチケット)の場合は、高く設定し、需要が少ないまたは供給が多い時には値引きをする、という考え方で変動をさせていきます。
ダイナミックプライシングは航空会社の「レベニューマネジメント」という考え方から始まりました。航空券の価格は、季節や時期によって都度変わります。お盆や正月のような繁忙期は高いし、閑散期は安くなります。これは、需要が高まる時期には値段を上げ、低い時期には値段を下げることで、売り上げを最大化するための仕組みです。いわゆる変動価格制度です。
この手法はその後、ホテル業界に広がって、宿泊費も同じように繁忙期や週末は高く閑散期には安く設定しています。
そして、レベニューマネジメントをAIやI Tで需要を予測して、売上と利益を最大化できる「時期に応じた値決め」ができる仕組みをダイナミックプライシングと呼ぶのです。
ここ最近はエンターテインメント業界、スポーツのチケット販売、特に野球やサッカーの試合などで使われるようになっています。
ガンバ大阪やFC東京は、このダイナミックプライシングを、試験的に導入しています。
ホームページにも、試合日程、席種、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータ分析をもとに試合ごとの需要予測を行い、需要に応じたチケット価格の変更を自動的に行うことで、ファンの皆様のニーズに応じた"適正価格"で販売を行う仕組みです。
サイトには「ダイナミックプライシングによる販売では、ご購入いただくタイミングにより、
価格が変動する可能性があります」と明記しています。
この背景には、AIやIT技術の進化により、天候や人の動き、さらには消費者の行動予測までリアルタイムで分析できるようになり、より精密でタイムリーな価格設定ができるようになったことがあります。
◾️ ダイナミックプライシングはどんな企業に向いているのか?
ダイナミックプライシングは、以下のような企業に向いてます。
集客が必要なビジネス
ダイナミックプライシングは、季節やイベントによって需要が大きく変わる企業、ホテル経営、観光業やイベント運営会社に非常に有効です。
多くのホテルでは、もう導入が進んでいますが、さきほどのサッカーの試合と同じ需要予測と値決めの考え方を、セミナーやイベントの集客にも使えます。
早割、とか、VIP席を用意するなど、いろいろなアイディアを取り入れることができます。
在庫を持つ小売業
さらに、在庫を効率的に処分したい小売業でも活用できます。 顧客が節約志向になっている昨今、適切な価格で販売することで消費喚起を促すことができるからです。
スーパーやデパ地下の食品売り場で遅めに時間になると、値引きのステッカーを貼ってあるのがこの考え方と同じです。
セールに頼るだけでなく、リアルタイムで価格を柔軟に変更することで、より効率的な収益を上げることが可能になるのです。
ここで大事なことは、早割にしても、最初の価格にしても、
「感覚的な」値決めをすることは避けるべき
という点です。
ガンバ大阪のサイトにもあるように、「お客様に適正な価格で買ってもらう」というのが大前提であることを忘れないようにしたいところです。
◾️ 値決めに重要な売上予測のシミュレーション
変動価格性のダイナミックプライシングを採用したい場合には、顧客数や売上などの"変動する数"を明確にすることが必要です。特に、
集客予測人数
販売単価
の2点に関わる変数です。
サッカーの試合の事例で説明します。
集客人数に影響を与える変数は、対戦相手の人気度、その試合の重要度〜決勝戦、優勝に関わる試合など、曜日や時間帯、天候の予測です。
販売単価の方は、ベースにする価格を決めます。そこに、需要の予測率、チケットが残り具合の予測、天候の予測率を加味して、どの時期にいくらの価格設定をするか、を決めます。
例えば、ベースの価格が5000円、優勝決定戦なので20%加味、チケットの残りは少なそうで10%加味、天気が良さそうなので5%加味して、6250円で最初は売り出す、といった具合です。そして順次販売していきつつ様子を見て価格を変動させるといった具合です。
需要に応じて、変動させるというのが基本です。
大企業の場合、多くはAIを使いリアルタイムでこれらの変数予測を集計をしながら値決めをしていく傾向にあります。
◾️ ダイナミックプライシングを自社に取り入れるためのステップ
Jリーグの球団のように、AIをフル活用しなければ、ダイナミックプライシングはできないというわけではありません。
新規事業やスモールビジネスでも、このダイナミックプライシングの考え方を参考に、需要の大きさと競合状況ごとに価格を変動するというコンセプトを生かせばいいのです。
ダイナミックプライシングを導入するためには、いくつかの重要なステップがあります。ここでは、そのポイントを具体的に解説していきます。
データの収集と分析
まずは、自社の商品やサービスに関するデータを集めることから始めましょう。過去の売上データ、季節による需要の変化、イベントや天候による影響などを分析することが重要です。このデータをもとに、どのタイミングで価格を調整すればよいかの判断がしやすくなります。
AIやITツールの活用
次に、AIやITのツールを活用して、リアルタイムの需要予測を行います。多くの企業が、天候や交通情報、消費者の行動データなどを取り入れて価格設定を行っています。これにより、需要が高まると予測される時期には価格を上げ、低い時期には下げるといった柔軟な価格戦略が可能になります。
顧客層に応じた価格戦略の設計
ターゲット顧客層に合わせた価格戦略を設計することも重要です。たとえば、若年層向けの商品には価格の変動幅を少なくし、富裕層向けの商品には、よりダイナミックに価格を変更するなど、顧客ごとに最適な価格調整を行うことが効果的です。
実践と継続的な改善
最後に、一度導入したら終わりではなく、継続的に効果を分析し、改善を続けることが大切です。価格調整が顧客にどのように影響しているかを定期的に評価し、必要に応じて戦略を見直すことで、さらに高い成果を得ることができます。
このように、ダイナミックプライシングは、一度導入するだけでなく、データに基づいた継続的な改善が求められます。これからの時代、消費者の行動はますます複雑になっていきますので、柔軟に対応できる価格戦略が成功の鍵となるでしょう。
ぜひ、自社で試してみてください。
この記事の内容を動画で説明しています。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
売上や利益が下がっていることに悩んでいる、新規顧客を獲得する仕組みを作りたいなど、
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