【図解と事例で解説!】マーケティング部門の仕事とは?成功と失敗事例に学ぶ部署の構築ステップ
◾️ 【経営者必見!】マーケティング部の仕事とは?
マーケティング部とは、何をやる部署なのでしょうか?
「営業のサポート部門として、マーケティング部を作ったのですがうまくいきません」
「マーケティング部はあるのですが、展示会に出したりホームページを作ったりで、売り上げに貢献していないのです」
と悩む経営者や営業責任者も多くいます。
また、「今後に備えて、マーケティング部門を作りたいのですが、何をさせればいいのでしょうか?」という企業も増えています。
「成果を出せるマーケティング部門にしたい」「でも、何をすればいいのかわからない」と悩み、相談に来る企業経営者や責任者に、現在の業務内容を聞いてみると、販売促進担当、営業のサポート、市場調査だけをやっているということが大半です。
BtoBビジネス、法人営業をする企業でよく見られるのが、営業担当が「とにかく数を回る」ことに集中して、マーケティング部がそのためのカタログや販促物を用意するとか、プレゼン資料を作るためのデータを調べるといった具合です。
もちろん業界や業種、企業によって違いますが、マーケティング部門が実際にやるべき仕事は何でしょうか?
本来、マーケティング部門の仕事は、
- 会社の全体を見わたし、
- どこに市場機会があるのか?
- 顧客が何を求めているか?
- ライバルの動きはどうか?
- 差別化ポイントは何か?ターゲットはどんな会社(または人たち)か?
という戦略を立てることです。
◾️【事例研究 2度マーケティング部を作った製造業のケーススタディ】
マーケティング部門を設立して、一度はうまくいかず部門を廃止し、その後組織を再構築してマーケティング部を設立した、車両製造メーカーの事例を紹介します。
この会社は、車両を生産し営業部門が運送会社に販売する、というBtoB 法人営業の業態です。営業部は生産性も高く、販売目標も達成していました。そこに将来のさらなる市場開拓に備えるために、マーケティング部を作ろうとしました。
当初は、2019年に営業部本部の1部門としてマーケティングを作り2名を配置したのです。
ところが、マーケティング部門の仕事内容が明確ではなかったこともあり、営業部門は「マーケティング部が分析やD M発送をしてもいいけれど、営業の邪魔をしないでほしい」と理解が得られませんでした。その後、すぐにコロナ禍があり、営業スタイルなども変更せざるをえず、一旦マーケティング部門は廃止になりました。
この時の教訓は、
- マーケティング部が果たす役割の意味がはっきりしていなかったこと
- マーケティング部という"箱"だけを作って何をアウトプットすべきか?がはっきりしていなかったこと
- マーケティング部門が営業のアシスタントとしてしか認識されていなかったこと
が挙げられます。
その3年後、2023年に再度マーケティング部門を設立しました。
前回の教訓を活かし、今回は
- 営業部門と製造部門から人材を抜擢
- 展示会などで顧客リストを収集し認知をあげていく
- 営業が回りきれていない見込み顧客を探しアプローチし営業に繋げる
- 部署として社長直轄の戦略部門として配置
という改善をしました。設立後は経営企画部門とも連携し、認知度向上やマーケティングオートメーションの準備など徐々に成果を出されています。
◾️ なぜ、マーケティング部門がうまく機能しないのか?
でも、なぜ先ほどのような状況になるのか、原因をいくつか挙げてみます。
1 マーケティングを誤解している
「マーケティングは広告や販促だ」と誤解しているケースがあります。あるBtoBの製造では、マーケティング部が単に展示会の仕切りやチラシ制作を担当し、戦略的な役割を求められていませんでした。
2 経営陣の理解が不足している
このような誤解は、経営陣がマーケティングの本質を理解していないことが原因です。
マーケティングは手法ではなく「事業戦略である」とまずは経営陣が捉えないと社内に根付きません。
3 長期的な戦略がない
短期的な売上が上がる施策だけを優先してしまうので、マーケティング部が戦略を構築する余地がないことも散見されます。
4 売り手目線のビジネス
顧客中心の文化が欠如していることが問題の場合も多くみられます。営業や開発部門が「売りやすいものを売ってくる」「作りたいものを作る」ことに注力し、顧客ニーズが後回しになってしまうのです。
このあたりが、マーケティング部門の仕事が機能しない場合の、根っこにある問題です。
◾️ マーケティング部の役割の誤解とその原因
マーケティング部の生産性を高めて、プロフィットセンターにするには、役割を明確にすることが必須です。ここで重要なのは「どんな仕事をやるか?」という業務内容を決める前に「なぜマーケティング部が必要なのか?」という根本的な理由、存在意義をはっきりさせることが重要です。
先ほど書いたように、マーケティング部の仕事は、現状を正しく把握して、正しい次の一手を打てるように"戦略"を立てることです。
しかし、BtoB法人向けビジネスの企業でよくみられるのは「マーケティング部は営業部のアシスタントをする」と認識されていて、営業チームが求める資料やリストを作ることが主な業務になりがちだったりします。
マーケティングの役割を誤解しているまま、部署にしていると以下のような問題が起きてきます。
1 戦略がないまま、現場のリクエストに振り回される
ITサービスを提供するある企業では、マーケティング部が営業からの 「とにかく資料を作ってほしい」という要望に追われ、 本来の戦略立案が後回しになっていました。
2 短期的な成果ばかりを追求する
長期的な成長を見失ってしまう。 ある製造業では、新製品のマーケティングが 「既存顧客にいかに早く売り込むか」に集中し、 新規市場開拓が後回しになってしまったため、成長の速度が遅れてしまいました。
3 自社目線での思い込みばかりで顧客目線の企業文化がない
自社の都合で物事を考えてしまい、「製品が良ければ売れるはず」という思い込みが根強く残ってしまいます。企業文化としての顧客中心思考が浸透していないと、顧客のニーズを十分に理解しないまま施策を進めてしまう傾向にあります。
◾️ 成果を出せる本質的なマーケティング部を作るには?
本来あるべきマーケティング部門にするには、どうしたらいいのでしょうか?
ステップを踏んで説明をしていきます。
1 マーケティング部の役割を再定義する
まずすべきは、小手先の変更ではなく「そもそもうちの会社のマーケティング部門は何をすべきなのか」という原点に立ち返ることが重要です。営業部門のサポートをするにしても、市場機会すなわち売れるチャンスを見つけることは、マーケティング部門の重要な仕事です。
ある産業機械メーカーでは、既存顧客の購買データを分析し、
潜在的な新市場への進出を営業部門に提案した事例があります。
また、顧客ニーズの理解と顧客価値の創造も重要な仕事です。ITソリューション企業が、マーケティング部の調査結果をもとに、
顧客が「実現できる成果」を具体的に訴求することで、新規契約率を大幅に向上させた例があります。
2 企業文化を顧客中心思考に変える
経営陣がマーケティングを戦略的な投資と捉えることが重要です。
ある物流会社では、経営陣がマーケティング部門を
単なるコストセンターではなく、成長の推進力として位置づけ、
全社的な顧客理解の強化に成功しました。
全社員が顧客の視点で考えるように教育することも重要です。ある製造業で、営業・開発・マーケティングが合同で顧客インタビューを行い、
新製品開発に活かした事例もあります。
この2つを固めた上で、マーケティング部門の仕事内容を明確にして、社内に周知させるです。具体的には、
ステップ1:
経営陣と現場にマーケティングの重要性を共有 特に、営業部門との連携を強化し、共通のゴールを設定する。
ステップ2:
具体的な役割とプロセスを設計 例えば、BtoB企業では、マーケティング部が「リード(見込み客)の質を高める」役割を担うことで、営業活動を効率化した例があります。
ステップ3:
成功事例を積み重ねる 小規模な施策で成果を出し、それを社内で共有して信頼を築く。
ステップ4:
継続的な改善と学習を行う SaaS企業がデータを活用して顧客の行動を分析し、毎月施策を改善した結果、契約更新率を大幅に向上させた例があります。
◾️ マーケティング部門を強化する際の注意点
マーケティング部門を再構築するときに、思いがけない落とし穴もあります。以下のようなポイントには注意したいところです。
1 手法中心で考えない
例えば、ある製造業で「とにかく展示会に出る」ことばかりを優先し、展示会後のリード育成が全く進まなかった事例があります。
2 短期的な数字だけを追う
SaaS企業が新規契約にばかり注力し、既存顧客の解約防止を疎かにしていた結果、継続率が下がり収益が安定しなかった例があります。
3 マーケティングを営業のアシスタントにしてしまう
営業部の「とりあえずの依頼」にすべて応えることが優先され、戦略的な市場開拓が後回しになるリスクです。
マーケティング部は、単なる「資料作成部隊」でも「広告担当」でもありません。
市場を理解し、顧客のニーズを汲み取り、企業全体を成長させる戦略的な部署です。
BtoB企業では特に、マーケティング部が営業活動を補完するだけでなく、新市場の開拓や既存顧客の深い理解を促進する役割を果たすべきです。
まずは、経営陣や社員全体でこの役割を明確に理解し、顧客中心の文化を育てることから始めてみましょう。
この記事の内容は、以下の動画でも説明しています。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
差別化して価格競争から抜け出したい、新規事業を立ち上げたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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