【フレームワーク&ワークシート有り!】問いを立てる力とは?〜AI活用で成果を出す"戦略的プロンプト設計"

◾️ 【経営者必見!】問いを立てる力とは?〜プロンプトの先にあるもの
「AIってすごいはずなのに、出てくる答えがなんか薄っぺらい...」
こう感じる方も多いと思いますが、実はそれ、AIが悪いのではなく「AIへの"問いかけ"が浅い」だけなのです。
「答えを知ることより、問いを立てることの方が大事」になっているのです。
一見、矛盾しているように聞こえるかもしれません。しかし、Web検索やAIで多くの情報が手に入る今、この「問いを立てる力」こそが、仕事の成果を左右する鍵になるのです。この「問いを立てる力」がなければ、いくらAIを使っても意味がないのです。
この記事では「問いを立てる力」がこれからのビジネスパーソンにとって最も大事なスキルになる理由を、AI時代のマーケティングと絡めて深掘りします。
◾️ AI時代のマーケティングと生成AIツール
マーケティングの現場では、ChatGPTのような生成AIツールがどんどん活用されています。市場分析、企画立案、顧客インサイトの発見、広告文の草案づくり...以前は人が何日もかけていた作業が、今や数分でアウトプットできる時代になりました。
このアウトプットが"曲者"なのです。
アウトプットを出すことは誰にでもできますが、価値のあるアウトプットを引き出すのは簡単ではありません。
そもそも「いいアウトプット」って何でしょう?
それは「具体的で、実務で使える、奥が深い」ものです。
あなたが思いつかなかった視点や気づきを与えてくれるもの。つまり、回答の「奥行きが深い」状態です。
ここに生成AIの最大の落とし穴があります。
誰でもAIを使えるけれど、誰でも"使いこなせる"わけではないのです。
AIを使いこなして質の高いアウトプットを出せるかどうかは、プロンプト(指示)の質、つまり「問いの立て方」にかかっています。なぜなら、AIツールが出力するアウトプットの質は、私たちが入力するプロンプト、つまり「問い」の質に大きく依存するからです。深い洞察や革新的なアイデアをを含んだAIからのアウトプット得るためには、表面的な質問では足りないのです。
浅い質問でAIツールを使うことは、まるで海の表面をすくうようなものです。確かに水は得られますが、その下に広がる豊かな海の生態系や貴重な資源には全くアクセスできません。
◾️ 「問いを立てる」ことの定義と重要性
「問いを立てる」とは、単に質問をすることではありません。それは、
「本質を明らかにするための、思考の入り口をつくること」
です。
今起きている現象のさらに裏にある"構造"や"背景"、どうしてそうなったのかという"因果関係"を見つけるための"入り口"になるのが良い問いです。良い問いのためには思いつきではなく、戦略的な設計が必要です。
自分が目指すアウトプットの質を上げるためには、この「良い問い」をすることが極めて重要です。優れた問いは、AIツールの能力を最大限に引き出し、より深い洞察や創造的なソリューションをもたらしてくれるからです。
◾️ AIに良い問いを出せるようになるには?
いい問いとは「深く考えられた」、「具体的で解像度が高い」問いです。
AIの答えを即戦力レベルの質に上げるには「思いつきの質問」ではなく「戦略的な問い」をすることが必要になります。
例えば、AIに「マーケティングのアイデアを出して」と聞いでも、「SNSを活用しよう」とか「キャンペーンを打とう」など、どこにでもある一般論のようなありきたりな答えしか返ってきません。
でも、以下のように問い方をちょっと変えてみるとどうでしょうか?
「40代の経営者が自分から問い合わせしたくなるような、BtoBのサービス紹介動画の構成案を3つ出して」
と質問すると、AIはターゲット層の課題を深掘りして、具体的な解決策を出してくれます。
◾️ 良い問いのためのフレームワーク その1"粒度"を上げる公式
では、どうすれば"良い問い"を立てられるようになるのでしょうか?
欲しいアウトプットの中身から逆算して、どんな問いを立てればいいのか、一度「構造化」して考えるのです。具体的には、AIから返ってくる答えの粒度、すなわち具体的で深い回答、にするに、「目的の明確さ」「対象の具体性」「文脈の深さ」の3つの要素に分解して考えます。この3つの掛け算で問いを立てていくと、格段にアウトプットの質が上がります。
構造化については、別の記事で説明しているので参考にしてください。
▶️ 構造化とは? 営業やマーケティングの課題を解決できる思考法
この3つを掛け算して質の高いアウトプットを出していく、すなわち粒度の公式 にしていきます。
質の高いアウトプット=「目的の明確さ」× 「対象の具体性」 × 「文脈の深さ」
① 目的の明確さ(Why)
• なぜこの答えが欲しいのか?
• 何を達成したいのか?
例:「売上を上げたい」ではなく「既存顧客のリピート率を上げたい」
② 対象の具体性(Who, What)
• 誰に対して?何に対して?
• ペルソナや商品、サービスを絞り込む
例:単に「女性」ではなく「40代・健康志向・子育て中の女性」
③ 文脈の深さ(How, When, Where)
• どんなシーンで?いつ?どうやって?
• 市場の背景やトレンドなど、前提条件も含める
例:「SNSで話題にしたい」ではなく「Instagramのリールで、自然派志向の人に3秒で刺さるフック」
◾️ プロンプト設計ワークシート
実践するには、以下のような「AIからのアウトプットの粒度を上げるためのプロンプト設計ワークシート」を作って自分の考えを整理するといいでしょう。
食品メーカーの製品開発の時の事例と合わせて解説します。
1. 目的の明確化(Why)
質問 1:今回AIに何をしてほしいのか?
記入例:売上を上げる施策を考えたい
質問 2:それはなぜ必要なのか?
記入例:最近リピート率が下がっているため
質問 3:成果として得たいゴールは?
記入例:既存顧客の購入頻度を月1→月2にしたい
2. 対象の具体化(Who, What)
質問 1:ターゲットは誰か?
記入例:40代女性/健康志向/子育て中
質問 2:どの商品・サービスについてか?
記入例:プロテイン入りグラノーラ
質問 3:どんなニーズ・課題を持っている?
記入例:朝食の準備が手間/健康は気になる
3. 文脈・状況の具体化(How, When, Where)
質問 1:いつ・どんなタイミングで使われる?
記入例:平日朝の忙しい時間帯
質問 2:どのチャネルで届けたい?
記入例:Instagramリール/LINE公式アカウント
質問 3:どんな切り口で伝えたい?
記入例:「時短×健康=朝が変わる」系メッセージ
4. 最終プロンプト文
ここまで構造化して準備したら、こんな感じでプロンプト(問い)としてまとめてみるとこんな感じですよね。
例:40代健康志向の女性が平日朝に時短で使えるプロテイン入りグラノーラを、Instagramのリール広告で話題化するための訴求案と構成を3つ出してください。SNSマーケティングの最新トレンドと消費者インサイトを考慮して。
出てきた最終的なプロンプトを、以下の4つの視点でチェックするのがいいでしょう。
- 目的が明確か?
- 対象が具体的か?
- 文脈が含まれているか?
- 回答の粒度が想像できるか?
このワークシートのように「思考を構造化」することは、「思いつきの質問」を「戦略的な問い」に変えてくれますし、ひいてはAIが出す答えを即戦力レベルの質に引き上げてくれるのです。
ご希望の方に、こちらのパワーポイントで作成したワークシートを差し上げます。弊社問い合わせフォームからお申し込みください。
▶️ マーケティングアイズ株式会社 問い合わせフォーム
◾️ 良い問いのためのフレームワーク その2 3Dマトリックス
さらに、深く具体的な問いを立てたいときには、以下の3つの角度から問いを構造化するといいでしょう。私はこれを3つのDから、
3D マトリックス と呼んでいます。
1. 深掘り:垂直的深化 Depth
問題の根っこにある原因を、"なぜそう経ったのか?"と多層的に掘り下げる思考プロセスです。トヨタ時で同社の「なぜなぜ5回分析」を発展させる、というイメージです。
マーケティングでは「売れない」という結果に対しその根っこにある真の理由をあぶり出す時に使います。因果関係の連鎖を見える化するのです。
2. 情報濃度を上げる Density
質的データを量的データに置き換えるなどして、計測できる数値で具体性を上げていきます。同時に、社内での再現性を高めるのにも有効です。
3.個々を連鎖させるDynamics
「会話の流れを積み木のように組み上げていく技術」です。具体的には、AIと対話する中で「前出してきた回答を踏まえて次の質問を作る」というサイクルを繰り返し、思考を段階的に深化させるプロセスです。
3Dマトリックスでの問いの立て方の事例:
飲食店が顧客のリピート率を上げるための改善施策を、AIに尋ねるという事例で考えていきます。
1. 深掘り:Depth:
飲食店のリピート率が低い原因を表面的に捉えるのではなく、段階的に掘り下げていきます。
「リピート率低下の直接要因はなぜ?」
→「メニューに飽きてきているが増やせない」
→「季節ごとの新メニュー開発が遅れている」
→「調理スタッフの人手不足で開発に時間がかかる」
→「スタッフの採用・育成体制に課題がある」
2. 情報濃度 Density:
期間、対象人数など、具体的で定量的なデータを使って問いを設計することによって、明確な状況の問いを立てます
「過去6ヶ月間の来店客1000人のうち、リピート率が35%にとどまっている飲食店で、スタッフの人手不足がメニュー開発に与える影響と改善策を教えて」
3. 個々の連鎖 Dynamics:
AIの回答を受けて次の質問をつなげ、対話の中で深掘りを続けます。例えば、
初期質問:「リピート率を上げるための一般的な施策は?」
→ AI:「メニューの多様化、接客の質向上、ポイント制度導入などがあります」
次の質問:「メニュー多様化の具体的な方法を、スタッフの人手不足を考慮して提案してください」
→ AI:「既存メニューのアレンジや季節限定メニューの導入、外部シェフとのコラボなどが考えられます」
さらに質問:「外部シェフとのコラボを成功させるための契約やプロモーションのポイントは?」
→ AI:「契約条件の明確化、SNSでの共同キャンペーン、試食会の開催などが効果的です」
このように、前の回答を踏まえて質問を重ねることで、より具体的で実践的な改善策が得られます。
◾️ 「問いを立てる力」があなたのビジネスを変える
AI時代の真のマーケティング力は、ツールを使う技術よりも「問いを立てる力」にあるんです。それは思考の深さであり、解像度の高さ。
問いが浅いと、AIの答えも浅い。でも、良い問いを立てられれば、AIは間違いなく最強の「右腕」になります。
自分の思考を整理し、本質を捉えた問いを立てる。この力があれば、生成AIのアウトプットはあなたのビジネスを加速させる強力な武器になるはずです。
ぜひ、今日から「問い」を大事にして、AI時代を生き抜く最強のスキルを手に入れてください。日々の小さな習慣が、あなたのビジネスを大きく変えていきます。
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
AIのマーケティング活用について聞いてみたい、AIをマーケティングや営業に取り入れたい、AIを支える社員を育てたい、など、
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