2025.08.10
営業力

【営業改革】営業の成約率をアップするマーケティング・セールス・セリングを使い分ける3ステップ

営業が頑張っているのに成果が出ない。

その原因は"営業力不足"ではなく、売り方の種類を理解していないことにあります。

目次
  1. なぜ多くの企業が営業で苦戦するのか?
  2. 3つの「売る活動」の定義と目的
  3. マーケティング・ファネルでの役割
  4. 3つのバランスから得られるもの
  5. 実際の失敗例と成功例
  6. 投資配分と評価指標
  7. 今すぐできる自社診断と改善アクション
  8. 持続可能な営業組織を作るために

「頑張って営業してるのに、なぜか売上が伸びない...」
「値引きしないと決まらない...」

──営業活動について回る悩みです。実は、この問題の根本原因は営業力不足ではありません。"売り方の種類"を理解していないことにあるのです。

この記事では、多くの経営者や営業責任者が混同している「マーケティング」「セールス」「セリング」の違いについて、図解と実例を交えながら詳しく解説します。この違いを理解することで、あなたの会社の売上構造は劇的に変わるはずです。

1. なぜ多くの企業が営業で苦戦するのか?

自問してみてください。あなたの会社の「売る活動」は次のどれが多いでしょうか?

  • マーケティング
  • セールス
  • セリング

「同じ"売る"活動では?」と思うかもしれません。しかしこの3つは全く異なるアプローチです。違いを理解せずに「とにかく営業を頑張れ!」「訪問件数を増やせ!」と精神論で押し切ると、疲弊・値引き競争・利益率低下という悪循環に陥ります。

2. 3つの「売る活動」の定義と目的の違い

マーケティング・セールス・セリング.png

上記の一覧表は、マーケティング、セールスと、セリングの違いを比較しています。

マーケティング:お客様に「この商品が欲しい」「この会社から買いたい」と思ってもらう状態を作る。機能すると「お願い営業」から「選ばれる営業」へ。

セールス:関心のあるお客様に対し、対話で信頼を築き、最適な解決策を提案。課題解決のコンサルタントとして機能。

セリング:購入をほぼ決めているお客様の最後の一歩を後押し。強力だが、多用すると信頼を失い翌月から売れなくなるリスク。

この3つを、農業に例えると、マーケティングで、土を耕し、種まき・水や肥料で育てます。セールスで、育った作物を最適なタイミングで収穫する、ということになります。セリングに頼り切ってしまうということは、まだ育っていない作物を無理やり引っこ抜くようなものなのです。
マーケティングという「土台作り」なしに、いきなりセリングで結果を求めるのは、持続可能なビジネスモデルではありません。

3. マーケティング・ファネル上での役割

この、マーケティング、セールスとセリングがそれぞれ、営業活動でどのような役割を果たすのかを、マーケティングファネル(一般的にセールスファネルと呼ばれますが、ここではマーケティング的な側面を説明するのでマーケティングファネルと呼びます)の各段階のどこにあてはまるかを考えていきましょう。

マーケティング・ファネルの作り方とその効用について、以下の記事で説明しているので参考にしてください。
▶️ 営業効率と売上を上げるマーケティング的セールスファネルの作り方

マーケティング・セールス・セリング.png

顧客は「興味→調査→比較→検討→購入→再購入/口コミ」と段階的に進みます。この各フェーズで顧客を動かす施策を打ちます。

1)マーケティングの役割(認知→関心→検討)

認知段階:課題解決の方法があることを知ってもらい、自社の専門性をアピール。

関心段階:成功事例など詳しい情報を提供し、信頼できる会社だと認識してもらう。

主な施策:

  • コンテンツマーケ(ブログ・YouTube・SNS)
  • SEO対策 / リスティング広告
  • セミナー・ウェビナー / メルマガ
  • 紹介・口コミ施策

2)セールスの役割(検討→契約)

検討段階:個別課題をヒアリングし、カスタマイズ提案。

購入段階:最後の懸念を解消。アフターケア/フォロー体制も提示。

主な活動:

  • ヒアリング(課題深掘り)・提案・デモ
  • 見積提示・条件調整・クロージング

3)セリングの役割(最下段の一押し)

主な施策:

  • 限定オファー・期間限定割引
  • 希少性・緊急性の訴求
  • クロージングトーク

4. 「3つのバランス」から得られるもの

  1. 売上の質が変わる:高単価で売れ、値引き依存が減少。薄利案件が減る。
  2. 成約率が上がる:温まった見込み客から商談できる。
  3. 再現性が高まる:個人に依存せず、仕組みで売れる。
  4. 疲弊が減る:冷たいアポが減り、心理負担が軽い。
  5. 部門連携が強化:質の高いリード受け渡しが進む。
  6. 長期的成長基盤:リピート・紹介が増え、積み上がる売上へ。

つまり、その場しのぎの売上から積み上がる売上へと営業組織を転換できます。

5. 実際の失敗例と成功例

失敗例:セリング依存で疲弊したIT企業

新規リストにランダムで毎日100件の電話。反応率は低下し、営業は疲弊。値引き幅が拡大し利益率が悪化。

成功例:マーケティング+セールスで変革した住宅メーカー

  1. 月2回の「家づくり成功セミナー」
  2. YouTubeで住宅購入ノウハウ発信
  3. メルマガで段階的に情報提供
  4. 個別相談会で詳細ヒアリング

成果:商談の成約率UP、値引き要求ほぼゼロ、担当者一人当たり売上が増加。

  • 事前教育で8割が「この会社で」とほぼ決定
  • 価格より提案内容が重視される
  • 営業は課題解決のコンサルタントとして機能

6. 経営者が知るべき投資配分と評価指標

推奨配分:マーケティング:セールス:セリング = 6:3:1

この配分を自社の実情と戦略に合わせて最適化すると、持続可能で利益率の高いモデルを構築できます。

7. 今すぐできる自社診断と改善アクション

ステップ1:現状分析(分類)

マーケティング活動:

  • ウェブ情報発信 / SNS運用 / コンテンツ制作
  • セミナー・イベント / メルマガ / SEO / リスティング

セールス活動:

  • ヒアリング / 提案書作成 / デモ
  • 見積提示 / 条件調整 / クロージング

セリング活動:

  • 飛び込み / テレアポ / 限定オファー / プッシュ型クロージング

ステップ2:割合の算出

現在の配分:マーケティング( )%:セールス( )%:セリング( )%

ステップ3:3か月改善計画

  1. マーケティング活動の強化
  2. セールス手法の改善
  3. セリング依存からの脱却

8. 持続可能な営業組織を作るために

  1. マーケティング=仕組み作り:自然に見込み客が集まる状態へ
  2. セールス=信頼と提案:対話で合意形成
  3. セリング=限定的な力技:多用は禁物

まずは自社の活動を3つに分類し、現状の割合を書き出しましょう。そして「マーケティングを強化する!」など、改善宣言を実行に移してください。宣言は行動を加速します。あなたの会社の営業変革を応援しています。

この記事については、以下の動画でも説明しています。参考にしてください。

このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

マーケティングを自社に取り入れたい、営業チームを活性化したい、新しいビジネスを軌道に乗せたいなど、この記事やマーケティングについて知りたいこと、聞いてみたいことは、マーケティングアイズ株式会社のフォームからお気軽にどうぞ(以下をクリックください)

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