【事例と図解で解説!】カスタマージャーニーの作り方〜成果を出す作成ステップ、仮説の立て方、作成のポイント
カスタマージャーニーとは「顧客がニーズに気づき、商品やサービスを知り、契約または購入し、使い、感想を共有し、次のニーズに気づく」までのプロセスを指します。
この各プロセスを見える化し、どのフェイズに問題があるのか、どこに手を打つと売り伸ばせるのか、を明確にできるフレームワークです。リピートが少ない、お客様が戻ってこない、解約が多い、、、頑張って営業しているのに、今までのお客様が離れていくことなどの売れない問題が起きた時には、このカスタマージャーニーを使い、問題解決をしていくのが有効です。
この記事では、
- カスタマージャーニーとは何か?
- カスタマージャーニーの作り方
- 初期のAmazonの事例
- どんな企業の課題解決に効くのか
- マスタマージャーニー作成のコツと注意する点
について説明します。
◾️ カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは「顧客がニーズに気づき、商品やサービスを知り、契約または購入し、使い、感想を共有し、次のニーズに気づく」までのプロセスを指します。
直訳すると「お客様の心の旅」となります。お客様が何を求めているのか、どのような顧客経験があって買うところまで来るのか、何に満足しているのか?を再確認し、手を打つべき顧客とのタッチポイントを見つけ、改善するためにとても便利なツールなのです。
◾️ 【事例で解説】カスタマージャーニーの作り方〜初期のアマゾンの事例
カスタマージャーニーをどのように作るのかをステップを踏んで説明していきます。
顧客がニーズに気づき、購入し、使い、次のニーズに気づくまでの、顧客心理の変化ごとに、どのような行動を取るか?をフェイズごとに見える化をしていきます。
カスタマージャーニーの作成ステップを、私が在籍していた初期のAmazonの事例で説明していきます。
顧客心理の動き
図の1行目が一般的な顧客心理の動きです。まず、顧客は自分に商品やサービスが必要だ、というニーズに気がつきます、そして、どの店で買うのが一番いいのかを探します。次に、買う前にどれが良いのかということを比較検討します。そして、店頭で買い、受け取って、その商品を使って、その感想を共有して、最後に次のニーズに気づくという流れになります。
顧客心理に伴う顧客行動
2行目は、それぞれの心理状態の時にどのような行動をするかを書き込んでいきます。
ここから、私が在籍していた頃の、初期のアマゾン、まだ本しか売ってなかった頃の事例で説明します。
アマゾンはE Cの書店なので、ここから「本を買いたい人」のカスタマージャーニーの事例になります。まず、ニーズに気づいた顧客は本を買いに出かけます。その時に、どの書店がいいのか?を考えます。店頭に着いたら、お目当ての本を探します。そして、購入し、読み、感想を共有します。そして、次にまた読みたい本が出てくる、といった流れになります。
顧客の心理の変化や、行動は当時も今も大きくは変わりません。しかし、情報量や情報ソースが増えていること、そして業界や業態によって変わることがあるので、自社のビジネスに当てはめて作成していくことが重要です。
顧客の妥協している点
次に、各フェーズで顧客が妥協したり、諦めている点を洗い出していきます。この段階で、顧客がどのような行動をして、どんな不便を感じているかという仮説を立てていくのです。
まず、本が欲しいというニーズに気づいたときに、当時はE Cがほとんどなかったので、リアルの書店で買うしかありませんでした。この時に、出かける時間がないとか、出かけること自体が面倒だ、という不便さを感じることがあるはずです。しかし、当時は自宅にいてE Cで本を買うことができなかったので、出かけるしかなかったのです。
次に、書店を選ぶ段階でも、必ずしも近くに最適な書店があるわけではありません。品揃えが多い大規模書店が、自宅から遠いところにあっても、買うためには仕方がなくいかなければなりませんでした。
そして、書店に入っても、必ずしもすぐに目の前にその欲しい本が置いてあるとは限りません。欲しい本がどこに置いてあるのか、すぐにわかるとは限らないのです。
実際に買う時には、列に並ばなければなりませんし、買った本は荷物になるので持ち運ぶのも不便です。また、読む時にも重いし、読んだ感想を伝えたいのにその場所がない、次に読みたい本が出てきたら、またこの繰り返しです。
顧客は、無意識のうちにさまざまな不便さを感じているのです。しかし、「こういうものだから仕方ない」「この業界では当たり前だからしょうがない」と妥協しているはずなのです。
アマゾンの事例で説明しましたが、自分の業界や仕事の場合でも、顧客が知らず知らずのうちにこのように諦めていることがあるはずです。したがって、まずここを見つけていくことが重要です。
顧客価値の提供
この顧客が妥協している点を一つ一つ、マーケティング的な施策で解決していくのです。これが顧客価値になります。
「探すときに面倒だ」とか「近くの書店がない」という妥協点に対しては。どこに行っても買えるように、インターネット上に書店を開き、P Cでもスマホでも買えるようにしています。今では、アマゾンのキンドルで電子書籍を買えるようにもしています。
欲しい本を探す時にサイト内検索を用意していましたし、関連図書を表示したり、売れ筋ランキングを表示していました。
ストレスなく買えるように、1クリックで買える仕組みを開発してあったり、価格や納期など最低限必要な書籍の情報を商品ページの上部に配置し、スクロールしなくても買えるように利便性を高めていました。
持ち帰る時に、重たいとか面倒だと思っている人たちに対して、宅配を用意したり、コンビニ受け取りを用意したりと、出来る限り便利に受け取りのところまで出来るように考えていました。
読むときの手元に欲しいと言うのもKindleで解決しました。ビジネス書などは、どこにいてもiPadやiPhone、パソコンでも読むことができます。Kindleのサービスは「場所を限定せず読める」という価値を提供しています。
感想を伝えたいけれども伝える場所がないという顧客課題に対しては、創業当初からカスタマレビューを充実させていました。また、今ではアマゾンのサイト上にも買ったものに対してのレビューをSNS中で同行投稿できるようにしています。
そして、次の本が欲しいというニーズに関して、これもアマゾンは創業当初から、買った履歴を徹底的に分析して「あなたはこの本が欲しいでしょう」というレコメンデーションメールを送っていました。これによって顧客は、自分が気づいてないけれど読んでみたい本に気づくことができるようになります。今では、メールではなくログインするとサイト上に、オススメ本や次に見たい映画が表示されます。
マーケティングの目的は、顧客の悩みを解決するために、顧客に自社サービスを伝えるのですが、単純に広告を出せばよいというものではありません
さまざまな場面で、顧客が悩んでいるポイントを、自社の強みで解決していくのです。
この時の提供物が、この表の赤い部分にある顧客価値になるのです。
カスタマージャーニーの作成は、この図にあるように、
顧客の心理、行動、妥協点、自社の解決策、というこの4項目をあり出すことから始めるといいでしょう。
広告の効果が落ちてきた、売り上げが伸びない、新規顧客が取れないという問題は、営業には着いて回ります。このような時には広告を変えるとか、S N Sを始めるというような小手先の手法を変えてもうまくいかないのです。
自社のターゲット層がニーズを発見して買うまでの一連の流れの中で、顧客が何に悩んでいるか、その点を把握できているかどうか、その悩みを解決できるマーケティングのコミニケーションができているかを洗い出すことで解決していくことが近道なのです。
◾️ なぜ、カスタマージャーニーを作成してもうまくいかないのか?
一方で、カスタマージャーニーを取り入れてもうまく使えないと悩無企業が多いのも事実です。
一つ目の理由は、カスタマージャーニーを単なる販売プロセスだと考えているからです。まず気をつけるべきは、顧客の立場で各フェイズを考えていくことです。
カスタマージャーニーは、登山をする人のようなものです。山に登るときは、事前に調べて、必要な装備を揃えて、足りなければ買い足します。山に登り切ってからも、そこで楽しむし、帰ってきてからも、いったことを評価して口コミやS NSにアップします。そしてまた次の山に登ろうとします。
同じようにステップを踏んで行動をする顧客おの立場に立って考えないと効果が出ないのです。
二つ目は、すべての顧客が同じ経験をすると仮定してしまうことです。しかし、実際には各顧客のジャーニーは異なります。私が実務でコンサルするときは、いくつかのターゲット層を設定して、複数のカスタマージャーニーマップを作ります。BtoBのビジネスであれば、顧客企業ごとに作成することが効果的です。
◾️ カスタマージャーニーはどのような営業課題に向いているか?
カスタマージャーニーはどのような営業課題の解決に有効なのでしょうか?
まず、顧客満足度が低いと感じる時ですね、カスタマージャーニーをマッピングして、顧客体験のどのポイントで問題が発生しているのかを特定し、それを改善するための戦略を立てることができます。
リピート顧客が少ない、一度購入した顧客が戻ってこない企業は、カスタマージャーニーを分析することで、顧客が再購入しない理由を理解し、長期的な顧客関係を築くための施策を考えることができます。
BtoBのビジネスに多くみられる、販売プロセスが複雑で、顧客が途中で離脱してしまうようなビジネスモデルに悩んでいる企業にも有効です。カスタマージャーニーを使って、顧客がどの段階で離脱するかを特定し、プロセスを簡素化することができます。
新しい市場や顧客層にアプローチしようとしている場合でも、そのターゲットのカスタマージャーニーを理解することで、より効果的にコミュニケーションを取り、ニーズに合った提案ができます。
◾️ カスタマージャーニー作成のポイント
効果的なカスタマージャーニーを作成するための重要なポイントは以下の通りです:
顧客の視点に立つ
カスタマージャーニーを作成する際には、企業の内部プロセスや都合ではなく、顧客の視点からアプローチすることが不可欠です。顧客がどのような体験を求めているのか、どのような問題や障壁に直面しているのかを理解し、それに応じてジャーニーを設計することで、顧客満足度を高めることができます。また、顧客の感情や期待をジャーニーの各段階に反映させることも重要です。
顧客セグメンテーションの適用
効果的なカスタマージャーニーを作成するためには、顧客を正確にセグメント化することが重要です。異なる顧客グループが異なるニーズ、行動パターン、購買動機を持っているため、これらの違いを理解することが必要です。セグメンテーションにより、各顧客グループに合わせたカスタマイズされたジャーニーを設計することができ、よりパーソナライズされた顧客体験を提供することが可能になります。
フィードバックとデータ分析の活用
カスタマージャーニーは一度作成したら終わりではありません。定期的に顧客からのフィードバックを収集し、実際のデータを分析することで、ジャーニーの効果を評価し、必要に応じて改善を行うべきです。フィードバックを活用して顧客の期待やニーズの変化に対応し、ジャーニーを進化させ続けることが成功に繋がります。データ分析を通じて顧客行動のパターンやトレンドを把握し、より精度の高いパーソナライゼーションを実現することも可能です。
これらのポイントを適切に実行することで、カスタマージャーニーは顧客にとってより魅力的で有意義なものとなり、企業にとっての販売促進やブランドロイヤリティの向上に寄与します。
執筆者
石油会社、家電メーカー、大型車両メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、法人営業にマーケティングを注入する社員研修を提供。 2013年より2023年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で23冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
差別化して価格競争から抜け出したい、新規事業を立ち上げたい、新しいビジネスを軌道に乗せたい、など、
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