「仮説思考」とは?経営判断のスピードと精度を高める実践ガイド【中小企業向け】

◾️【経営者必見‼️】仮説思考の重要性

      目次
  1. ◾️【経営者必見‼️】仮説思考の重要性
  2. ◾️ 仮説とは何か?
  3. ◾️マーケティングで仮説が有効な6つの理由
  4. ◾️ 仮説を立てるステップ 
  5. ◾️ 仮説思考を鍛えるための実践方法
  6. ◾️ 仮説思考における注意点 
  7. ◾️ 仮説思考は全てのビジネスパーソンに有効 

近年、ビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。テクノロジーの進化、グローバル化の加速、そして予測不可能な社会情勢。このようなVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity:変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代において、従来の経験や勘に頼るだけでは、迅速かつ的確な意思決定を行うことが困難になっています。
そこで注目されているのが「仮説思考」です。

成果を出す組織」には共通点があります。それは、常に仮説を立てて行動していることです。
一方で、「頑張っているのに成果が出ない」「いろいろやっているけど手応えがない」と悩む企業には、ある決定的な共通点があります。それは、"仮説がない"まま動いているということ。
今回は、「仮説とは何か?」「なぜ仮説がビジネスの鍵になるのか?」をわかりやすく解説しながら、すぐに使える"仮説思考"の実践法をお伝えします。

法人営業、BtoBマーケティングでの仮説の具体的な立て方については、以下の記事で説明しているので参考にしてください。
仮説の立て方〜法人営業の商談を成功させるマーケティング的アプローチ

◾️ 仮説とは何か?

仮説とは、「何かが起きたときに、その理由や原因についての推測」です。たとえば、売上が急に上がったり下がったりした理由を考えるとき、「おそらくこういうことが原因だろう」というのが仮説です。日常生活での例でいえば、 家のカギが見つからないとき、テーブルの上に置き忘れたかもしれない、ポケットに入っているかもしれない、といった仮説を立てて探していくことに似ています。

もう少し掘り下げてみると仮説とは、

  • 現象や事柄について、まだ証明されていないが、最も可能性が高いと考えられる説明や推測をすること、そして、
  • まだ証明できていないけれど、知識や観察に基づいて、こうではないか?と推測する説明や予測であり、大事なのは、
  • 実験や調査によって正しいかどうかを検証できること

です。

◾️マーケティングで仮説が有効な6つの理由

なぜ、マーケティングにおいて仮説を立てる必要があるのでしょうか?マーケティングに限らず、ビジネスでは、「早く・正しく・少ないコストで成果を出す」ことが必須です。不確実で、変化の早い市場を相手にするマーケティングにおいては、仮説を立てることが、戦略思考の出発点となるのです。

仮説を立てることが、なぜ有効なのかについて以下により具体的に挙げていきます。

1)迅速な対応:

ビジネス環境が変化したとき、迅速に対応するために仮説を立てることが必要です。仮説を立てることで、何が問題かを素早く特定し、効果的な解決策を講じることができます。
思い出してください。コロナ禍で突然ビジネス環境が変わった時、素早く「オンラインシフト」の仮説を立てて検証し行動に移した企業と、「様子を見よう」と何もしなかった企業では、その後の業績に大きな差が生まれました。

2)目標と戦略の明確化:

仮説があると、目標を明確にし、どのような行動を取ればよいのか具体的な戦略を立てることができます。「このように行動すれば、このような結果になるだろう」という予測が立てられるため、チーム全体で目指すべき方向性が共有しやすくなります。

私がコンサルティングを行う際には、必ず最初に「この施策を実施したらどんな結果が得られるのか」という仮説を明確にするようにしています。この仮説を共有し検証しながら進めていくことで、クライアント企業の社員全員が同じ目標に向かって進むことができるのです。

3)リスクの軽減:

仮説を検証することで、間違った方向に進むリスクを減らすことができます。検証を通じて仮説が正しいかを確認し、不確実性を減らします。

例えば、新製品開発において「この機能を付けると、ユーザーの満足度が上がるだろう」という仮説を立て、プロトタイプを作って少数のユーザーでテストすることで、全面展開前にリスクを軽減できます。アプリ開発の事例でいえば、最終段階で大幅な仕様変更を余儀なくされることがあったとしても、事前の仮説検証によって被害を最小限に抑えることができる、といった具合です。

4)イノベーションの促進:

仮説思考は、新しいアイデアを生み出す源泉にもなります。「もしこうしたら、こういう結果になるのではないか」という思考実験を繰り返すことで、従来の枠組みにとらわれない発想が生まれやすくなります。

シリコンバレーの成功企業が「Fail Fast, Learn Fast(速く失敗して、速く学ぶ)」を掲げているのも、仮説検証のサイクルを素早く回すことの重要性を示しています。

5)リスクの軽減:

仮説を立てて検証するというプロセスは、ビジネス上の失敗や損失を最小限に抑えるための強力な手段です。

たとえば、顧客のニーズの中身や購買行動の仮説を立てて、それをもとに商品開発をしたり施策を打つことで、もし仮説が誤っていた場合でも早い段階で軌道修正することができます。

これにより、「売れない商品ができてしまう」「市場の反応を見誤って大きな損失を出す」といったリスクを大幅に軽減できます。また、仮説検証を通じて、「どの施策が効果的で、どの施策がそうでないか」を事前に見極めることができるため、無駄なコストやリソースの浪費も防げます。特に新規事業の立ち上げやスタートアップなど、リソースが限られている現場では、効率的に意思決定し、最小限の投資で最大の成果を目指すために、仮説思考は不可欠です

6)学習と成長:

仮説を立てて検証するサイクルを繰り返すことで、組織や個人は「なぜうまくいったのか?」「いかなかったのか」を体系的に学ぶことができます。特に、想定外の出来事が起こったり、失敗したりしたことを正しく"刻み"次の活かすことが重要です。

この失敗や成功体験を蓄積することが、次の意思決定や戦略立案の精度を高め、結果として「成長」につながります。

仮説思考を習慣化することができれば、日常の業務や新しい課題に対しても、柔軟かつスピーディーに対応できるようになります。さらに、仮説検証を通じて新たな発見やアイデアが生まれることも多く、これがイノベーションや業務改善のきっかけになる場合も少なくありません。

◾️ 仮説を立てるステップ

マーケティング活動においての「仮説を立てるステップ」について説明します。

1)現状分析:

まず、自社の強みや弱み、顧客のニーズ、競合の状況を分析します。この段階で大切なのは、できるだけ客観的なデータに基づいて分析することです。

具体的には、以下の4つの視点からの分析です:

  1. 市場(Market): 市場規模、成長率、トレンド
  2. 顧客(Customer): ニーズ、不満点、購買行動、意思決定の基準
  3. 自社(Company): 強み、弱み、リソース、文化
  4. 競合(Competition): 主要プレイヤー、市場シェア、差別化ポイント

この4つの視点で現状を正しく把握することから始めます。そして売れるチャンスはどこにあるのか、リスクはどうなのか?という軸で、分析をしていきます。
詳しい分析のやり方については以下の記事で説明しているので、参考にしてください。
3C分析とは?分析の方法、集める情報、ポイントとステップ

2)仮説の立案:

分析に基づいて、具体的な仮説を立てます。このとき、複数の仮説を考えることで、より多くの可能性を検討します。

良い仮説の条件

以下に良い仮説の必要な要素は以下のとおりです。

  • 具体的である - 「売上が伸びるだろう」ではなく「○○の施策により、△△のターゲット層の購入率が××%向上するだろう」
  • 検証可能である - データや観察によって正しいかどうかを判断できる
  • 因果関係が明確である - 「なぜそうなるのか」の説明がつく
  • 反証可能である - 間違いであることも証明できる設計になっている

前提を疑う

仮説を立てる際のコツは、「当たり前」や「常識」を疑ってみることです。「なぜそうなのか」を5回繰り返し問うと、意外な発見があります。

3)検証する

立てた仮説が正しいかどうかを検証します。A/Bテストや市場調査などを通じて仮説の正しさを確認し、必要に応じて修正を行います。
検証方法には様々なものがありますが、ビジネスの文脈では以下が有効です。

  • 小規模実験 - 限定的なユーザーや地域でテスト
  • プロトタイピング - 簡易版の製品やサービスを作って反応を見る
  • データ分析 - 既存データから相関関係を探る
  • ユーザーインタビュー - 直接顧客の声を聞く
  • A/Bテスト - 異なるバージョンを比較する

私が関わったあるECサイトでは、「商品説明ページにユーザーレビューを表示すると購入率が上がる」という仮説を立て、サイトの一部でA/Bテストを実施しました。結果、レビュー表示群では購入率が向上し、全サイトへの展開を決定しました。

4)行動と学習をする

検証結果に基づいて行動し、その結果からさらに学びます。この「仮説→検証→行動→学習」のサイクルを回し続けることが重要です。

ここで大切なのは、「失敗」を恐れないことです。仮説が間違っていたことが判明しても、それは貴重な学びです。むしろ、早い段階で間違った方向に進んでいることに気づけたのは成功と言えます。

◾️ 仮説思考を鍛えるための実践方法

仮説思考は誰でも鍛えることができるスキルです。以下に、日常から実践できる方法をいくつか紹介します:

1)「なぜ?」を5回繰り返す

何か問題や現象に直面したら、「なぜそうなのか」を5回繰り返し問いかけてみましょう。表面的な理解から、徐々に本質に迫ることができます。

  1. なぜ売上が下がっているのか? → 新規顧客が減っているから
  2. なぜ新規顧客が減っているのか? → ウェブサイトへのアクセスが減っているから
  3. なぜアクセスが減っているのか? → 検索エンジンでの表示順位が下がったから
  4. なぜ表示順位が下がったのか? → コンテンツの更新頻度が下がったから
  5. なぜ更新頻度が下がったのか? → コンテンツ制作のリソースが他のプロジェクトに割かれているから

こうして本質的な課題が見えてきます。

2)反対の仮説も考える

自分が立てた仮説の「反対」も必ず考えてみましょう。これにより思考の偏りを防ぎ、バランスの取れた視点を得ることができます。

  • 仮説:「価格を下げれば売上が上がる」
  • 反対仮説:「価格を下げると、品質の低下を懸念されて売上が下がる」

両方の可能性を検討することで、より深い洞察が得られます。

3)日常の小さなことから仮説検証を習慣化する

大きなビジネス判断だけでなく、日常の小さなことからでも仮説思考は鍛えられます。

  • 「この時間にこのカフェに行けば、空いているだろう」という仮説を立て、実際に検証する
  • 「この本を読めば、○○のスキルが身につくだろう」という仮説を立て、読後に効果を確認する

こうした小さな検証の積み重ねが、大きな意思決定における仮説思考力の基盤となります。

◾️ 仮説思考における注意点

仮説思考は強力なツールですが、いくつか注意すべき点もあります。

確証バイアスに注意する

自分の立てた仮説を証明しようとするあまり、それを支持する証拠だけを集めてしまう傾向(確証バイアス)に注意が必要です。反証となるデータも積極的に探し、公平に評価することが重要です。

複数の仮説を持つ

一つの仮説だけに固執せず、複数の仮説を持つことで、より広い視野で問題を捉えられます。「こうに違いない」と決めつけず、「こうかもしれないし、別の可能性もある」という柔軟な姿勢が大切です。

定性的・定量的データをバランスよく使う

数字で表せるデータ(定量的)だけでなく、顧客の声や現場の観察など(定性的)もバランスよく取り入れることで、より豊かな仮説が立てられます。

◾️ 仮説思考は全てのビジネスパーソンに有効

仮説を立てることは、ビジネスにおいて迅速で効果的な問題解決の鍵です。変化に対応する力を身につけるためにも、仮説を立てて検証するスキルを磨くことが重要です。マーケティングやビジネスでの成功を目指すなら、仮説の立て方を理解し、実践に活かしていきましょう。

私自身、これまでの経験から言えることは、成功したプロジェクトには必ず質の高い仮説があったということです。逆に失敗したケースでは、仮説が不明確だったり、検証が不十分だったりしました。

あなたもぜひ、日常の小さなことから仮説思考を取り入れてみてください。そして、その経験をビジネスにも応用してみましょう。きっと、これまでとは違った視野と思考の深さが得られるはずです。

最後に、この記事を読んで、「仮説思考を自分のビジネスに取り入れてみよう」と思った方は、まず今日から何か一つ、仮説を立てて検証してみることから始めてみてください。小さな一歩が、大きな変化を生み出す第一歩になるはずです。

この記事については以下の動画でも説明しています。参考にしてください。

このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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