【経営者必見‼️】マーケティングの「なぜ?」に答える一冊〜弓削徹氏「武器としての行動経済学"売れる"のウラ教えます」

◾️ 武器としての行動経済学: 「売れる」のウラ教えます

マーケティングの現場にいると、こんな疑問に直面することがあります。

「なぜこの商品は売れるのか?」
「なぜ同じような商品なのに、こちらは選ばれないのか?」
「なぜお客様は理論的に考えれば明らかに損な選択をするのか?」

これらの「なぜ?」に対する答えの多くは、人間の心理や行動パターンの中に隠されています。

従来の経済学は、「人間は合理的に行動し、損得を冷静に判断して意思決定をする」ことを前提に成り立っています。ですが、現実のビジネス現場ではそんな"経済学に出てくるような人"には、ほとんどお目にかかれません。

むしろ実際のお客様は、

「買うつもりはなかったのに、つい手が伸びた」
「A社のほうが安いのに、なぜかB社に決めた」
「よくわからないけど、なんとなく良さそうだったから」

といった"感情"や"直感"、その場の"空気"に大きく影響されて意思決定をしています。

これはけして珍しいことではなく、誰しもが日常的に経験していることです。私たちは、損得より「後悔したくない」気持ちで動きますし、合理性より「納得感」や「安心感」で判断します。つまり、人間は"理屈"よりも"感情"で動く生き物なのです。

それにもかかわらず、多くのビジネス現場では「商品力で勝負しよう」「性能がいいから売れるはずだ」「論理的に説得すれば伝わる」と考えがちです。でも、それだけではなかなか成果に結びつきません。むしろ、「どうすれば相手の"心"を動かせるか?」を考えたほうが、はるかに効果があるのです。

この「人間の非合理性」──感情や心理に基づく行動のクセ──を、体系的に整理し、ビジネスに活用できるようにしたのが行動経済学です。

この「武器としての行動経済学: 「売れる」のウラ教えます」は、その行動経済学の考え方を使って、体系的にひもといて、ビジネスの現場で実践的に活用する方法を示してくれます。

武器としての行動経済学

◾️ マーケティングの出発点は「顧客心理の理解」

私がマーケティングの仕事をする中で常に感じているのは、すべての成功はニーズの発見から始まるということです。しかし、ニーズといっても、お客様が言葉にできるニーズばかりではありません。むしろ重要なのは、お客様自身も気づいていない潜在的なニーズや、心の奥底で感じている"まだ満たされていない"未充足の不満や欲求を読み取ることです。
*未充足ニーズについては以下の記事で解説しているので参考にしてください。
▶️ 差別化に効く未充足ニーズとは?見つけ方とソリューションの提供方法

そのためには、顧客心理を深く理解する必要があります。先ほど書いたように、人は合理的に動くとは限りません。何かを買うときの行動は感情や直感、さらには無意識のバイアスに大きく左右されています。この人間らしい「非合理性」を理解して、マーケティング戦略に活かすことこそが、真の競争優位を生み出すのです。

◾️ 行動経済学とマーケティングの絶妙な融合

この本では、行動経済学を単なる学術的な知識として紹介するのではなく、マーケティングの現場で直接使える実践的なツールとして「実践と理論」をセットで提示している点です。

「現実の人間」の行動を研究する学問としての行動経済学を、実際の"ウリの現場"でどう活かすのか?がわかる内容になっています。「実践と理論」、すなわち「具体と抽象」を行ったり来たりしながら読めるので、実際の仕事にどう活かせばいいのか?がわかるのです。

この知見を、店舗運営からBtoBの商談まで、幅広いビジネスシーンに応用する方法を、具体例を豊富に使いながら解説している点が、この本の特徴なのです。

第1章:売り方/商談 ――視点を変えれば売上は激変する

第1章では、売り方や商談における行動経済学の活用について詳しく解説されています。
私がこの章で特に印象深かったのは、同じ商品でも「見せ方」「伝え方」を変えるだけで、お客様の受け取り方が劇的に変わるという事実です。これは、人間の認知バイアスを理解したマーケティング戦略の威力を示しています。たとえば、商品の価値を伝える際に、機能的ベネフィットだけでなく、感情的ベネフィットをどう訴求するか。お客様が「これなら欲しい!」と思う瞬間は、論理的な判断よりも感情的な納得感が大きく影響しています。
商談の場面でも、データや論理だけで相手を説得しようとするのではなく、相手の立場や心理状態を理解し、その人が「なるほど」と腹落ちできるストーリーを組み立てることが重要です。行動経済学の知見を活用すれば、相手の意思決定プロセスに寄り添った提案ができるようになります。

第2章:広告表現 ――「それなら欲しい!」と言わせる表現力

第2章の広告表現に関する内容は、私のようにマーケティングコミュニケーションに携わる人間にとって、とても実践的で価値のある内容でした。また、弓削氏はコピーライター出身ということもあり、この章だけでも1冊の本が成り立つくらい濃い内容です。

キャッチコピーやボディコピーを書く際、多くのマーケターが悩むのは「どう表現すれば相手の心に響くか」という点です。商品の特徴や機能を並べるだけでは、お客様の心は動きません。大切なのは、お客様の心理状態や意思決定プロセスを理解し、その人が思わず「それなら欲しい!」と言いたくなるような表現を見つけることです。

心理メカニズムを踏まえた表現技法が、具体例とともに紹介されています。これらの技法は、誰にでも思い当たるような身近な事例で説明されているため、すぐに自分の仕事に応用できる内容になっています。

第3章:価格決定 ――値札のつけ方で利益は大きく変わる

価格設定は、マーケティングにおいて最も重要でありながら、最も難しい課題の一つです。第3章では、行動経済学の視点から価格決定の戦略について解説されています。

私が日頃感じているのは、価格に対するお客様の反応は、単純に高い・安いという絶対的な評価だけでなく、比較対象や提示方法によって大きく変わるということです。これは行動経済学でいう「アンカリング効果」や「フレーミング効果」と呼ばれる現象です。

この考え方を、マーケティングの重要なパーツの"値決め=プライシング"、価格の見せ方や設定方法について、豊富な事例とともに解説しています。これらの知識は、店舗での価格表示から、BtoBでの見積もり提示まで、幅広い場面で活用できる実践的な内容です。

第4章:ブランド化 ――長く愛される商品を育てる秘訣

第4章のブランド化について述べられた内容は、短期的な売上向上だけでなく、長期的な顧客関係構築を考える上で非常に示唆に富んでいます。
ブランドとは、お客様の心の中にある「その商品・サービスに対するイメージや感情」です。強いブランドを築くためには、機能的な価値だけでなく、感情的な価値や象徴的な価値を提供する必要があります。

人間は「認知的不協和」を避けたがる、一度選んだブランドに対して愛着を持ち、その選択を「正しいと信じたがる」ものです。この心理を理解すれば、お客様にブランドへの愛着を感じてもらうための施策を設計できます。

この本では、このような心理メカニズムを活用したブランド戦略と実践の方法について、具体的な事例とともに解説されています。

「再現可能性」にこだわった実践的な内容

このように、この本の最大の活用方法は、理論を実践に落とし込む「再現可能性」にあります。行動経済学の理論は興味深いものが多いのですが、ビジネスの現場でどう活用すればよいのかわからないことが多いのも事実です。

たとえば、店舗での商品陳列の仕方、ウェブサイトでの情報の提示順序、営業資料の構成方法など、日常的な業務の中で実践できる具体的なテクニックが随所に散りばめられています。

◾️ こんなビジネス・パーソンに向いた1冊

この本は、以下のような課題感を持つ中小企業経営者、営業やマーケティング担当者にオススメします。

顧客をもっと理解したい

行動経済学の知識を身につけることで、お客様の行動の背景にある心理メカニズムを理解できるようになります。これにより、より的確なニーズの発見と、効果的な施策の立案が可能になります。

施策の成功確率を高めたい

人間の心理法則に基づいた施策を立てられると、KKDすなわち、「勘や経験や度胸」に頼った施策よりも成功確率を高められます。この本で紹介されている理論と事例を自分のビジネスに当てはめながら読むことで、より効果的な営業戦略や、マーケティング施策を設計できるようになります。

競合と差別化したい

多くの企業がまだ行動経済学を営業やマーケティングに本格的に活用していない現状では、この知識を持ち戦略や施策を考えること自体が、競合に対しての差別化になります。

営業利益や限界利益を上げたい

効果的な施策を打つことで、同じ予算でもより大きな成果を上げることが可能になります。また、無駄な施策を減らすことで、マーケティング予算の効率的な活用も図れ、ひいては利益の改善につながります。

◾️ この本の活用法

この本のような良書を、自分のビジネスに当てはめたいときのコツをいくつか紹介します。

全部やろうとしない〜段階的な実践 

いきなりすべてをやろうとせずに、まずは自社のビジネス・自分の仕事に関連が深いところから、一つずつ実践してみることをおすすめします。小さな成功体験を積み重ねることで、行動経済学Xマーケティングの威力を実感していくのがコツです。

みんなでやってみる〜チーム学習の推進 

個人で学ぶだけでなく、チーム全体で内容を共有しながらやってみると、より深い理解と実践的な活用ができるようになります。中小企業の経営者なら「社内で読書会をやる」など、参加メンバーそれぞれの視点でこの本のエッセンスを解釈し、多様な施策アイデアを生み出すこと目指すのです。

読みっぱなしにしない〜効果測定の重要性 

なんでもそうですが、学びを実践する時は、必ず効果測定を行うことが重要です。A/Bテストなどの手法を活用して、施策の効果を定量的に把握し、さらなる改善につなげていくことが大切です。

顧客心理の「兆し」を見つける

冒頭で述べたように、マーケティングの成功はニーズの発見から始まります。そして、そのニーズの多くは、お客様の心理や行動の中に「兆し」として現れています。

行動経済学の知識を身につけることで、これまで見過ごしていた顧客心理の微細な変化や、行動パターンの背景にある真の動機を読み取る力が上りします。この力こそが、競合他社には見えない新しい市場機会を発見し、お客様に真に愛される商品・サービスを生み出す源泉となるのです。

◾️ マーケティングの新しい武器

弓削徹氏の『武器としての行動経済学――「売れる」のウラ教えます』は、まさにタイトル通り、マーケティングの現場で使える強力な「武器」を提供してくれる一冊です。

理論的な裏付けがありながらも実践的で、豊富な事例により理解しやすく、そして何より「今日から使える」内容になっています。中小企業経営者や、営業・マーケティングに携わるすべての人にとって、顧客心理を深く理解し、より効果的な施策を立案するための大きな示唆をくれる1冊です。

お客様の「なぜ?」に答えを見つけ、「それなら欲しい!」と言ってもらえる仕掛けを作りたいと考えているマーケターの皆さんには、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。この本を読んだ後、あなたの経営、営業、マーケティングアプローチは確実に変わるはずです。⬇️ こちらから:

武器としての行動経済学.jpg

◾️ 執筆者

このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

マーケティングを自社に取り入れたい、営業チームを活性化したい、新しいビジネスを軌道に乗せたいなど、この記事やマーケティングについて知りたいこと、聞いてみたいことは、マーケティングアイズ株式会社のフォームからお気軽にどうぞ(以下をクリックください)

マーケティングアイズ株式会社 お問い合わせフォーム
マーケティングアイズ問い合わせ.png