マーケティング法務とは?:特商法、景表法、知的財産、薬機法〜マーケティングの法的リスク






マーケティングと法規制をどう捉えるか | 〜攻めと守りが両立してこそ「自然に売れる仕組み」ができる〜

マーケティングと法規制をどう捉えるか
〜攻めと守りが両立してこそ「自然に売れる仕組み」ができる〜

「マーケティング=売れる仕組み」だと私は考えています。

ただし、その仕組みは"攻める"だけでは成り立ちません。いくら顧客の心を動かす広告やキャンペーンを仕掛けても、法律や規制を無視したやり方では、長期的には信頼を失い、ブランド価値は大きく損なわれてしまいます。

つまり、マーケティングには「攻め」と「守り」が必要です。攻めは売れる仕組みをつくること。守りは法律や規制を踏まえ、リスクを避けること。この両輪が噛み合ってはじめて、企業は持続的に成長できます。

この記事では、景品表示法や著作権、契約や知財といった「守り」の観点と、それをマーケティング戦略にどう組み込むかという「攻め」の観点をあわせて整理してみます。

景品表示法と広告規制 〜「お得感」をどう伝えるか〜

まず押さえておきたいのが景品表示法です。

有料商品の価格設定や、景品の提供には上限が設けられており、誤解を招くような「お得」表示はすぐに問題となります。

マーケティングの現場では「安く見せたい」「お得に感じてもらいたい」という心理が働きます。しかし、その一歩先に法律違反が待っていることを忘れてはいけません。

ここで大事なのは「価格の根拠」を社内で説明できるかどうかです。単なる数字合わせではなく、「なぜその価格設定なのか」「どういう価値を反映しているのか」を論理的に整理すること。これは規制対応であると同時に、実はブランディングにも直結します。

「根拠ある価格」は顧客に信頼感を与えます。値引き頼みではなく、価値に基づいた価格提示を徹底すること。これが景品表示法対応を超えて、顧客に選ばれる理由づくりにつながります。

外注契約と権利関係 〜契約書は"攻めの道具"〜

広告制作やキャンペーン運営を外注するとき、契約を甘く見ると後で痛い目を見ます。

「この写真、誰の権利なのか?」「納品後に別媒体で使えるのか?」といった問題は、必ず発生します。

私自身、自身のマーケティングマネージャー時代や、今もコンサルティングの現場で、企業が契約書の不備からトラブルに巻き込まれる場面を何度も見てきました。これは、大企業も中小企業も、個人事業主も同じです。

ここで重要なのは、契約書を単なる"守りの書類"と考えないことです。むしろ「攻めの仕組み」を支える道具として捉えるべきです。契約書がしっかりしていれば、安心して外注パートナーに任せられる。その安心感が、スピーディーでクリエイティブなマーケティング活動につながるのです。

逆な言い方をすれば、契約書がある方が後々"揉めない"のは、上記のような理由によるからです。

マーケティングに潜む法的リスク 〜小さな会社こそ要注意〜

大企業であれば法務部がチェックしてくれるでしょう。けれども、中小企業や個人事業主はどうでしょうか?

「少しくらい大丈夫だろう」と思ってSNSに広告を出した結果、炎上や行政処分につながるケースも珍しくありません。

知的財産権の侵害、インフルエンサー規制違反、不正確な広告表現...。これらは小さな会社ほど打撃が大きい。せっかく築いた信用が一瞬で崩れるのです。

ではどうするか。

ひとつは、法律のアップデートを常に追いかけること。もうひとつは、外部の専門家と連携することです。弁護士や専門のコンサルタントに相談するのはコストではなく「未来の保険」だと考えるべきです。

新規事業と著作権管理 〜"引用"のリスクを甘く見ない〜

新規事業を立ち上げるとき、必ず出てくるのがコンテンツの扱いです。

資料や映像を使う際に「ちょっとぐらいなら大丈夫」と考えるのは危険です。引用は正しいルールに沿って行わなければ、著作権侵害となります。

安全なのは、出典を明示するか、口頭での引用にとどめること。特にセミナーや研修の場では、スクリーンにそのまま他人の資料を映すのではなく、自分の言葉に置き換えて伝える工夫が必要です。

著作権法遵守は"守り"に思えるかもしれませんが、実は"攻め"でもあります。自分のオリジナル視点を持つことが、そのまま差別化やブランド価値につながるからです。

模倣品と知財問題 〜売れれば必ず真似される〜

製品やサービスがヒットすれば、必ず模倣品が出ます。

特許や実用新案、商標が切れていればなおさらです。

ここでのポイントは「知財=攻めの武器」と捉えること。単に模倣を防ぐだけではなく、「これはうちのオリジナル」という証明そのものがブランディングになるのです。

さらにEC時代は、Amazonレビューなど消費者発信の情報もリスクになります。ステルスマーケティング規制が厳格化し、やらせレビューは即発覚します。逆に言えば、正直なレビューを集める仕組みを整えることが差別化になるのです。

専門職のマーケティング規制 〜士業は信頼が命〜

税理士や弁護士といった専門職のマーケティング活動にも制限があります。SNS発信や広告での表現は、他業界よりも厳しく見られる。特にPR表記やAI生成コンテンツの扱いには注意が必要です。

ここで重要なのは「長期的な信頼」をどう設計するか。いきなり顧問契約を迫るのではなく、まずはスポット契約から始めて顧客との関係性を育てる。これは法律リスク回避であると同時に、顧客の心理に沿った自然なマーケティングでもあります。

戦略とコンテンツマーケティング 〜守りを超えて攻めに活かす〜

法規制を意識すると「守り」に偏りがちですが、それをうまく戦略に組み込むことで「攻め」に転じられます。

たとえば、コンテンツマーケティング。法律に沿った正しい表現を徹底すれば、それ自体が"信頼できる情報源"として顧客に評価されます。特に士業やBtoB領域では、「信頼されるコンテンツ」が最大の営業ツールになります。

さらに、社内のインサイドセールスや外部パートナーと連携し、法的に安全な範囲でクリエイティブを最大化する。これが、法務とマーケティングを統合した新しい競争力になるのです。

まとめ 〜攻めと守りの両輪がマーケティングを強くする〜

ここまで見てきたように、景品表示法、著作権、商標、インフルエンサー規制...。マーケティングには常に法律の影がつきまといます。

けれどもそれは「制約」ではなく「設計条件」だと考えるべきです。条件を正しく理解すれば、安心してクリエイティブに集中できる。守りが強いからこそ、攻めが生きるのです。

私はこれを「自然に売れる仕組み」と呼んでいます。顧客に価値を届ける仕組みを攻めでつくり、同時に守りを固めて信頼を失わない。この両輪が回り出したとき、企業は本当に強くなります。

マーケティングを"売り込み"ではなく、"仕組みづくり"として捉える経営者や担当者にとって、この攻めと守りの視点こそが未来を切り開く鍵になるのです。

このテーマをさらに深めたセミナーや研修では、実際の事例を交えながら「攻め」と「守り」をどう設計するかを具体的にお伝えしています。ご関心のある方はぜひチェックしてみてください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を提供するものではありません。具体的なケースについては、専門家にご相談ください。



以下の動画でも、マーケティング法務について語っていますので、参考にしてください。

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執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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