AIOとSEOの必須戦略:生成AI時代に「選ばれる」ための5ステップ

【理央周の視点】「SEOはもう古い!」は本当か? 生成AI時代の「選ばれる」戦略、AIO(AI Optimization)の衝撃

検索上位だけを狙う時代は、すでに曲がり角を迎えています。

なぜなら、今のユーザーはGoogle検索よりもChatGPTやGemini、Perplexityといった生成AIに答えを聞き始めているからです。実際、2024年の調査では、10〜20代の約60%がAIの使用経験があり、そのうちの目的が情報収集の主要手段としてAIチャットを利用していると回答しています。(MarkeZine 生成AIの利用率は3割強、用途1位は「検索や調べもの」10代は「勉強や学習サポート」LINEリサーチより)

では、SEOはもう不要なのでしょうか?

実はそうではありません。

結論から言うと、SEOとAIO、この2つを共存させていくことがこれからの必須戦略なのです。

今日のブログでは、次の4つのポイントをお話ししていきます。

  1. AIを使う検索「AIO」とは何か
  2. SEOとAIOの違い
  3. この2つがこれからどうなるのか
  4. 今から準備すべきこと

最後まで読んで、あなたのビジネスに役立ててください。

第1章:AIOとは何か?〜検索から対話へのパラダイムシフト

まず「AIO」ですが、これは AI Optimization(AI最適化) の略です。

簡単に言うと、生成AIが答えを返すときに、自社の情報がきちんと引用されるように最適化すること。これがAIOの本質です。

これまでのSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)は「検索エンジンで上位に表示されること」が目的でした。GoogleやYahoo!の検索結果で1ページ目、できれば1〜3位に入ることで、ユーザーのクリックを獲得し、自社サイトへ誘導する。これが王道でした。

しかし、AIOは「AIが答えるときに、自社を情報源として引用させること」が目的です。

つまり、Google検索に"表示される"から、AIの"口から語られる"へ。

これが最も大きなパラダイムシフトです。

なぜAIOが重要になったのか

背景には、ユーザーの情報収集行動の劇的な変化があります。

  • ChatGPTのユーザー数は2023年11月時点で週間アクティブユーザー1億人を突破
  • Googleも検索結果に「AI Overview」を導入開始
  • MicrosoftのBingはCopilotを統合し、対話型検索を強化

特に若い世代では、「ググる」よりも「AIに聞く」方が早くて正確だと感じる人が増えています。調べ物をするとき、複数のサイトを巡回して比較検討するのではなく、AIに質問すれば一発で要約された答えが返ってくる。この便利さに慣れたユーザーは、もう元には戻りません。

そして、このAIの回答の中に、あなたの会社の情報が含まれているかどうか。これが今後の集客やブランディングに直結してくるのです。

第2章:SEOとAIOの違い〜アルゴリズム対策から信頼性勝負へ

では、SEOとAIOは具体的にどう違うのでしょうか。

2つの違いを整理すると、次のようになります。

SEOとAIOの比較表

項目 SEO(検索エンジン最適化) AIO(AI最適化)
目的 検索結果で上位表示されること AIの回答に引用されること
評価軸 アルゴリズム(キーワード、被リンク、滞在時間など) 信頼性、独自性、構造化データ
重視するもの コンテンツ量、更新頻度、内部リンク 一次情報、専門性、E-E-A-T
ユーザー行動 クリックして複数サイトを比較 AIの要約をそのまま信頼
成果指標 検索順位、流入数、CTR 引用率、指名検索、ブランド認知
コンテンツ戦略 キーワードベース、量産型も有効 専門性・独自性重視、質重視

SEOはアルゴリズム対策、AIOは信頼性勝負

SEOは、Googleのアルゴリズムに評価されることが最優先です。そのため、キーワードの配置、被リンクの獲得、ページ速度の改善、モバイル対応など、技術的・戦術的な施策が中心になります。

一方、AIOは、AIに「この会社の情報なら答えに使える」と判断させることが重要です。そのため、以下のような要素が評価されます。

  • 一次情報:自社で取得したデータ、独自の事例、実体験に基づく知見
  • 専門性:特定分野における深い知識と実績
  • 信頼性:公式サイト、権威あるメディアからの引用、実名での発信
  • 構造化データ:AIが読み取りやすい形式(FAQ、見出しタグ、スキーママークアップなど)

つまり、SEOで必要なのは「量とキーワード」。AIOで必要なのは「信頼性と一次情報」なのです。

第3章:これからどうなるか?〜検索とAIの融合時代

では、今後どうなっていくのでしょうか。

すでに始まっている変化

  • GoogleやBingはすでに検索とAIを統合している
    Googleの「AI Overview」、Bingの「Copilot」など、検索結果にAI生成の要約が表示されるケースが急増しています。
  • Z世代やミレニアル世代は「ググる」より「AIに聞く」が当たり前に
    特に20〜30代のビジネスパーソンは、業務の調べ物で ChatGPT や Gemini を日常的に利用しています。
  • SEO一本足では顧客流入を取り逃がすリスクが高まる
    検索経由の流入が減少傾向にある企業も出始めています。特にBtoB企業では、購買前の情報収集段階でAIが使われるケースが増えており、従来のSEO対策だけでは不十分になりつつあります。

ただし、検索はゼロにはならない

誤解しないでほしいのは、検索がなくなるわけではないということです。

  • 比較検討が必要な商品・サービス
  • 最新ニュースやトレンド情報
  • 地域情報や店舗検索
  • 公式サイトへの直接アクセス

これらの用途では、今後も検索エンジンが使われ続けるでしょう。

だからこそ、結論はこうです。

SEOとAIOの共存こそが、これからの情報発信の正解です。

「検索」からも、「AIの回答」からも選ばれる。そんな情報発信の仕組みを構築することが、2025年以降のマーケティング戦略の核になります。

第4章:今から準備すべき5つのこと

AIOで準備すること.pngでは、具体的に何を準備すればいいのか。重要な5つのポイントを挙げます。

1. プロンプトエンジニアリングのスキルを磨く

質の高いアウトプットを引き出すためのプロンプト作成スキルを得ることが最も重要です。

AIの特性を理解し、仮説に基づいた具体的な指示を出すことで、期待以上の結果を得られます。例えば、「競合分析をして」という曖昧な指示ではなく、「競合A社とB社のウェブサイトのコンテンツ戦略を比較し、我が社が差別化できるポイントを3つ挙げてください」という具体的なプロンプトを使うことで、より実用的な回答が得られます。

社内でプロンプトライブラリを構築し、チーム全体でAI活用スキルを底上げすることが競争優位につながります。

2. 信頼性ある一次情報を発信する

AIはオリジナリティと信頼性を重視します。

自社で取得したデータ、実際の事例、独自の知見やノウハウ。これらの一次情報こそが、AIに引用される最大の武器です。

例えば:

  • 顧客アンケートの結果データ
  • 自社実験や検証の結果
  • 業界特有の専門知識
  • 実名での体験談やケーススタディ

こうした情報は他では得られないため、AIが回答を生成する際に高い確率で参照されます。

3. AIが読みやすい形で発信する

構造化データで整理されたコンテンツを作成しましょう。

AIは構造化された情報を理解しやすい特性があります。以下のような形式が効果的です。

  • FAQ形式(質問と回答を明確に分ける)
  • 見出しタグ(H1、H2、H3)の適切な使用
  • 箇条書きや番号リスト
  • 表やグラフでのデータ整理
  • スキーママークアップの実装

また、文章も「です・ます調」で統一し、専門用語には説明を加えるなど、AIが理解しやすい日本語で書くことも重要です。

4. 専門領域を絞り込む

「この分野といえば御社」とAIに学習させる。差別化とUSP(独自の売り提案)の明確化がより重要になります。

あれもこれも手を出すのではなく、特定の領域で深く専門的な情報を発信し続けること。これがAI時代の差別化戦略です。

例えば、「中小企業のDX支援」という広いテーマではなく、「製造業のペーパーレス化支援」「建設業の工程管理システム導入」など、より具体的で専門的な領域に絞り込むことで、AIからの引用率が高まります。

5. AI倫理とセキュリティへの配慮

AIを活用する上で、倫理とセキュリティは避けて通れません。

  • 顧客情報や機密情報をAIに入力しない
  • AI生成コンテンツの著作権や責任の所在を明確にする
  • 誤情報や偏見を含む回答をそのまま使わない
  • AIの限界を理解し、最終確認は人間が行う

特にBtoB企業では、顧客から預かった情報の取り扱いに細心の注意が必要です。AI活用ガイドラインを社内で策定し、全社員に周知することをお勧めします。

業界別:AIO活用の具体例

AIO業界別活用事例.png

製造業の場合

事例:BtoB建築部品メーカー

「研磨技術の基礎データ」「最新の表面処理工法」といった専門的な技術情報をウェブサイトで公開します。

ユーザーが「ステンレス部品の精密研磨技術」とAIに質問したとき、その会社の技術解説記事が引用されることで、新規引き合いが増加。技術営業の前段階で、すでに「専門家」として認識されている状態を作れます。

ポイント:技術資料、CADデータ、加工事例など、具体的で実用的な情報を惜しみなく公開する

サービス業(士業)の場合

事例:税理士事務所

「インボイス制度のよくある質問」「小規模事業者の消費税対策」など、クライアントが実際に困っているポイントをまとめた記事を公開します。

ChatGPTの回答に引用されることで、「この税理士事務所は詳しそう」という信頼感が生まれ、新規相談につながります。

ポイント:法改正情報、実務での注意点、具体的な対応手順など、実践的な情報を発信

卸売業(複合機・オフィス機器販売)の場合

事例:中小企業向け複合機販売会社

「中小企業のペーパーレス導入事例」「印刷コスト削減の平均データ」「業種別の最適な複合機選定方法」などをまとめて公開します。

ユーザーが生成AIで「中小企業に最適な複合機サービスは?」と質問すると、この企業の事例やデータが引用され、営業への問い合わせにつながります。

ポイント:導入前後の比較データ、ROI計算例、業種別の推奨スペックなど、意思決定に役立つ情報を提供

小売業・EC事業者の場合

事例:専門性の高いECショップ

「商品の選び方ガイド」「メンテナンス方法」「よくあるトラブルと解決法」など、購入後のサポート情報も含めて充実させます。

AIが「◯◯の選び方」と聞かれたときに、あなたのショップのガイド記事が引用されることで、ブランド認知と信頼性が向上します。

ポイント:商品レビュー、使用シーン別の提案、専門家監修の記事など、付加価値の高い情報を発信

AIO導入時の3つの重要な注意点

最後に、AIOに取り組む上で必ず押さえておくべき注意点を3つお伝えします。

注意点1:粗製濫造を避ける

AIに拾わせたいからといって、大量のコンテンツを量産するのは逆効果です。

質の低い記事は「信頼性が低い」と判断され、むしろAIに無視されやすくなります。特にAI生成ツールで自動生成した薄い内容の記事を大量に投稿しても、AIOの観点ではほぼ意味がありません。

一次情報や独自性のある事例を丁寧に公開することが重要。月1本でも、質の高い記事を継続する方が効果的です。

注意点2:短期的効果を求めすぎない

SEOと同じで、AIOもすぐに成果が出るものではありません。

AIが情報を学習・認識し、回答に反映されるまでには時間がかかります。GoogleのインデックスやAIモデルの学習サイクルを考えると、最低でも3〜6ヶ月は継続的な取り組みが必要です。

中長期で「AIに選ばれる存在」になることを目指して、継続的にコンテンツを蓄積する必要があります。焦らず、着実に積み上げていきましょう。

注意点3:目的の明確化と人間の役割

「何のためにAIOを導入するのか」という目的を明確にすることが最も重要です。

単にAIを使うだけでなく、「コンテンツ制作の効率を50%向上させる」「新規問い合わせを月10件増やす」「特定キーワードでのAI引用率を向上させる」など、具体的な目標を設定することで、AIOの取り組みが成功しやすくなります。

また、完璧なAIは存在しません。AIが生成したコンテンツやデータは、必ず人間の目で確認・修正する必要があります。ファクトチェック、トーンの調整、ブランドとの整合性確認など、最終的な品質管理は人間の役割です。

まとめ:検索からも、AIの口からも選ばれる存在へ

いかがでしたでしょうか。

今日は「SEOはもう古い!」という強めの入りから始めました。

ただし、SEOが不要になったわけではありません。

結論は、SEOとAIOの両輪で情報発信すること

  • SEO:検索からの流入を確保し、能動的に情報を探すユーザーを捉える
  • AIO:AIの回答から信頼を獲得し、受動的に情報を得るユーザーにもリーチする

この2つを組み合わせることで、これからの集客チャネルを最大化できます。

「検索」からも、「AIの口」からも選ばれる。

そんな存在を目指して、今日から準備を始めましょう。

具体的には:

  1. まず自社の専門領域を明確にする
  2. その領域で発信すべき一次情報を洗い出す
  3. FAQ形式や構造化データを意識したコンテンツを作成する
  4. プロンプトエンジニアリングのスキルを社内で共有する
  5. 効果測定の仕組みを整え、中長期で取り組む

この5ステップから始めてみてください。

2025年、AI時代のマーケティング戦略は、もう始まっています。


あなたの会社ではAIOへの取り組み、始めていますか?

ぜひコメント欄で、あなたの考えや取り組み状況を教えてください。アウトプットすることで、理解が深まります。

この記事については、以下の動画でも説明しています。参考にしてください。

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執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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