『Passion Relations真・広報PR術』が示す、ビジネスパーソンに必要な"共感の連鎖"を生み出す力

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『Passion Relations真・広報PR術』が示す、ビジネスパーソンに必要な"共感の連鎖"を生み出す力

『Passion Relations真・広報PR術』が示す、ビジネスパーソンに必要な"共感の連鎖"を生み出す力


なぜ今、この本が必要なのか


情報が溢れる今、どれだけ素晴らしい商品やサービスを持っていても、それが適切に伝わらなければビジネスは成立しません。これは広報担当者だけの課題ではなく、すべてのビジネスパーソンが直面している現実です。

そんな中で、『Passion Relations真・広報PR術 想いをこめた「物語」が共感の連鎖を呼ぶ』を手に取ってみました。この本は、"伝説の広報"と呼ばれる著者が、百貨店勤務時代の経験と、独立後も数多くの企業・地域での広報支援の知見をもとにして、「広報」について書かれています。手に取って最初に感じたのは、これは単なる広報テクニックの本ではなく、ビジネスにおけるコミュニケーションの本質を問い直す書籍だということでした。


この本が解決する3つの課題


課題1:「情報は発信しているのに、誰にも響かない」

多くのビジネスパーソンが抱える悩みの一つが、「発信しているのに反応がない」というものです。プレスリリースを出しても取材が来ない、SNSで投稿しても反応が薄い、社内で提案しても共感を得られない――これらはすべて同じ根を持つ問題です。

本書が提示する答えは明確です。「ただ情報を届けるだけでは人は動かない」。心を動かし、行動を促すためには「物語」が必要なのです。商品やサービスの背景にある開発者や企業の「想い」。その想いをくみ取り、物語として発信することで初めて人々の共感が生まれます。

この指摘は、マーケティングコミュニケーションの本質を突いています。コミュニケーションとは本来、一方通行ではなく双方向の対話のやり取りを指します。社内であれ社外であれ、相手の心を動かすためには、情報の羅列ではなく、物語として語る必要があるのです。

課題2:「メディアや関係者との関係構築ができない」

広報担当者だけでなく、営業やマーケティング、事業開発など、多くの職種で「関係構築」は重要なスキルです。しかし、どうすれば信頼関係を築けるのか、具体的な方法論を持っている人は少ないのが現実です。

本書の素晴らしい点は、著者が実際に体験した事例・メソッド・実践方法と注意点・適用範囲がセットで書かれていることです。第1章「心を動かす」では、メディアが動く本当の理由と、メディアとの関係構築について具体的に語られています。ここで重要なのは、「目的は取材されることではなく、想いや努力、姿勢を示すこと」だという著者の主張です。

この考え方は、メディアとの関係に限らず、あらゆるビジネスシーンに応用できます。顧客との関係、パートナー企業との関係、そして社内の部門間連携においても、「取引すること」や「協力してもらうこと」が目的ではありません。想いや努力、姿勢を示し、そこから生まれる仲間意識、信頼関係こそが不可欠なのです。

課題3:「一過性の成果に終わり、継続的な成長につながらない」

短期的な成果は出せても、それを継続させ、さらに加速させることができない――これも多くのビジネスパーソンが直面する壁です。

本書が提唱する「Passion Relations」は、まさにこの課題への答えです。PR(Public Relations)を超えた「Passion Relations」――想いをこめた物語をつなぎ、広がりを生み出す新しいコミュニケーションのあり方。第4章で語られる「物語の心が動く―共感を呼ぶ広報の力」は、長く愛され、ビジネスが継続し加速するための本質を示しています。

共感が生まれれば、それは連鎖します。共感の連鎖が認知を大きく広げ、ファンを生み出し、ビジネスを加速させます。この「伝播式PRメソッド」の考え方は、広報活動だけでなく、事業戦略そのものに応用できる視点です。


本書の最大の魅力:具体と抽象を行き来できる構成


読みながら共感したのは、本書の構成です。著者が実際に経験した事例と、そこから導き出されたセオリーがセットで書かれている点です。この具体と抽象がセットになっていることで、読者は「ここに書かれていることを、自分の状況に置き換えたらどうなるか?」を考えながら読み進めることができます。いわゆる自分ごとにできるのです。

第2章「仲間を作る」では、「物語」と価値の創造、そしてメディアとの協業による、その物語の拡散が語られています。ここで示される事例は単なる成功体験の披露ではなく、なぜそのアプローチが有効だったのか、どのような状況で使えるのか、そして注意すべき点は何か――これらが丁寧に解説されているため、読者は自分の仕事に落とし込むヒントを得られます。

第3章「ファンの輪を広げていく」で語られる「人間味に人は惹かれる」という指摘は、AI時代の今、忘れがちな、しかし重要なポイントです。SNSでユーザーと直接つながる時代において、企業や個人の「人間味」がいかに重要か、完璧に作り込まれたメッセージよりも、想いや情熱が伝わるコミュニケーションの方が、人の心を動かす、という本質を思い起こさせてもらえます。この原則は、SNS運用だけでなく、プレゼンテーションや提案活動、チームマネジメントなど、ビジネスでの全てのコミュニケーションにも通じます。


この本の再現性が高い理由


本書が実務での再現性を持つ理由は3つあります。

  • 第一に、著者自身の実践から生まれた知見である点です。「アムール・デュ・ショコラ」という実際のイベントの成長に貢献した体験と、その後も数多くの企業・地域で広報支援を重ねてきた経験に基づいています。やはり、現場で磨かれたメソッドは生々しく、実務に応用するときのことを想像しながら読むことができます。
  • 第二に、「広報の域を越える」と言われた熱量の重要性を語っている点です。単なる精神論ではなく、その熱量こそが周りを動かす原動力になります。メディアを動かし、社内の他部門を巻き込み、顧客の心をつかむ――すべての起点は、担当者の想いと熱量にあります。部門間連携、事業ごとのサイロ化に悩む企業にとって、見直すべき点はここにあります。また担当者が熱量を持つべきということは、どんな業種、どんな職種にも当てはまる真理です。
  • 第三に、コミュニケーションの本質を捉えている点です。コミュニケーションとは一方通行ではなく「双方向の対話のやり取り」というのが大原則です。マーケティングでのコミュニケーションにおいて社内も社外も同じです。広報担当者だけでなくて、営業、企画、人事、経営者など、あらゆる立場の人が持つべき認識なのです。

どんな人に向いているのか


本書は広報担当者だけでなく、幅広い部門のビジネスパーソンにとって価値があります。

  • 広報・PR担当者: 広報パーソンとしてどう在るべきか、何を大切にすべきかという本質について再認識できます。
  • マーケティング・事業開発担当者: 「物語」と「共感の連鎖」の考え方は、深い顧客理解とエンゲージメントを生み出す上で必須です。
  • 経営者: 社内外のステークホルダーとの関係構築、ビジョンの浸透、組織の一体感の醸成に必要な「想いを物語として伝え、共感を生み出す」プロセスを学べます。
  • 営業担当者: 製品スペックや価格だけでなく、物語として語ることで、顧客の心を動かし、営業活動の質を劇的に変えるヒントが得られます。
  • 地域活性化や社会貢献活動に関わる人々: 地域の魅力や活動の意義を伝え、仲間を増やすための「伝播式PRメソッド」が応用できます。

私が特に印象に残った3つのポイント


読了して、特に心に残ったポイントを3つ挙げていきます。

  1. 「目的は取材されることではない」という指摘です。想いや努力、姿勢を示すことこそが広報の目的であり、そのための仲間意識、信頼関係が不可欠だという主張は、ビジネスコミュニケーション全般に通じる真理です。
  2. 「人間味に人は惹かれる」という視点です。テクノロジーが進化し、AIが台頭する時代だからこそ、人間味の価値は高まっています。不完全でも想いのこもったメッセージの方が、人の心に届きます。
  3. 「広報の域を越える熱量」の重要性です。自分の役割を越えて、想いを持って取り組むからこそ、周囲を巻き込み、大きなうねりを作ることができます。これは広報に限らず、すべての仕事に通じる姿勢です。

実務に活かすための読み方


本書を最大限に活用するためには、ただ読むだけでなく、自分の状況に当てはめて考えることが重要です。以下の問いを自分に投げかけつつ読むと効果的です。

  • 「自分が担当している商品・サービスの物語は何か」
  • 「自社の想いをどう言語化できるか」
  • 「社内外のどの人と仲間意識を築くべきか」

最後に:これからのビジネスに必要な「つながりの力」


情報過多の時代において、人々が求めているのは情報ではなく、共感できる物語です。AIやテクノロジーがどれだけ進化しても、人の心を動かすのは、人の想いと物語なのです。

この本が提唱する「Passion Relations」は、単なる広報手法ではなく、これからのビジネスに必要な「つながりの力」を生み出す哲学です。想いをこめた物語が共感を呼び、共感が連鎖することで認知が広がり、ファンが生まれ、ビジネスが加速します。

広報担当者はもちろん、マーケター、営業、経営者、そしてすべてのビジネスパーソンにとって、「想いを伝え、人を動かす力」は、テクノロジー全盛の今だからこそ、必要なスキルです。

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▶️ Passion Relations真・広報PR術 想いをこめた「物語」が共感の連鎖を呼ぶ

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執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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