【事例で解説】戦略と計画の違い:成果を出す企業がやっている戦略立案と計画作成

◾️ 【経営者必見‼️】 戦略と計画の違い:なぜあなたの目標は達成されないのか

多くの経営者や営業責任者から、こんな悩みの相談いただきます。

「しっかりとした計画を立てているのに、なぜか目標を達成できない」 
「数字は追いかけているけれど、結果が出ない」 
「チーム全体が頑張っているのに、なぜか成果に結びつかない」

もしあなたもこのような経験をしたことがあるなら、それは、

戦略より先に計画を立ててしまっている

からです。

目次
  1. ◾️ 【経営者必見‼️】 戦略と計画の違い:なぜあなたの目標は達成されないのか
  2. ◾️ 戦略と計画の違い:似ているようで全く違うもの
  3. ◾️ なぜ多くの人が計画から始めてしまうのか
  4. ◾️ 戦略先行のアプローチがもたらす効果
  5. ◾️ 【事例】営業・マーケティングでの戦略的思考の実例
  6. ◾️ 戦略実行時の「3つの落とし穴」と回避方法
  7. ◾️ 戦略と計画の相互依存関係

多くの企業で見られるのが、「とりあえず計画から始める」というアプローチ。売上目標を決め、訪問件数や広告出稿量などを月次で細かく割り振り、「これでいける」と思って動き出します。しかし、途中で思うように成果が出ず、「やっぱりうちの営業力が足りない」と嘆く。この繰り返しです。

なぜこうなるのでしょうか?それは、

戦略という"地図"がないまま、"旅行のしおり"だけ作って出発している

からです。

戦略とは「どこへ向かうか」を決める地図であり、計画はその目的地にたどり着くための「具体的な行程表」です。戦略がないまま計画を立てるのは、「地図を持たずに旅のスケジュールだけを作る」ようなものです。時間通りに行動しても、肝心の目的地にたどり着けなければ意味がありません。

この記事では、多くの経営者やビジネスパーソンが混同している「戦略」と「計画」の根本的な違いについて解説し、なぜ戦略を先に立てることが成功への近道なのかをお話しします。

◾️ 戦略と計画の違い:似ているようで全く違うもの

まず、戦略と計画の定義を明確にしましょう。

戦略とは?

戦略(Strategy)とは、目標を達成するための全体的なアプローチや方向性を定めることです。長期的なビジョンの設定、そのビジョンを達成するために「何をするか」(そして重要なことに「何をしないか」)を決定することです。

戦略では、市場でのポジショニング、競合との関係、独自の価値提案などを考えます。例えば、「新しい市場でリーダーになるために革新的な技術を開発する」「特定の顧客層に焦点を当てて市場シェアを拡大する」といったものです。


計画とは?

一方、計画(Plan)は、戦略を実現するための具体的なステップやアクションを決めることです。短期的な目標の設定、必要なタスクの特定、リソースの配分、タイムラインの確立などが含まれます。
計画は、戦略が定めた方向性に従って、実際に「何を、いつ、誰が行うか」を具体化します。例えば、「次の四半期に新製品を開発するための計画」「市場調査を行う計画」「新しい広告キャンペーンを立ち上げる計画」などです。

戦略と計画の違いについては、以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
▶️ 戦略と計画の違いとは?成果が上がるマーケティング戦略立案と計画への反映方法を解説

この違いを分かりやすく説明するために、家の建設に例えてみましょう。

戦略は、建築家が描く設計図のようなものです。どんな家を建てたいのか、どこに重点を置くのか、全体のデザインと構造を決めます。「家族が集まるリビングを中心とした温かい家にしたい」「自然光をたくさん取り入れた明るい家にしたい」これが戦略です。

計画は、その設計図に基づいた具体的な施工計画です。「基礎工事は3月1日から開始」「電気工事は4月15日まで完了」「内装工事は5月中旬から開始」これが計画です。
もし設計図(戦略)なしに施工計画(計画)だけを立てたらどうでしょうか?作業は進むかもしれませんが、最終的にどんな家ができるかは誰にも分かりません。逆に、設計図だけあって施工計画がなければ、いつまで経っても家は完成しません。

◾️ なぜ多くの人が計画から始めてしまうのか

マーケティングや営業計画では、数字の目標や売る計画を立てることが一般的です。「今月は1000万円の売上目標」「新規顧客を50社獲得」「商談数を月100件実施」といった具合に。
これらは一見すると具体的で分かりやすく見えます。しかし、実際にはその通りに進むことはほとんどありません。なぜでしょうか?

それは、これらの数字が「何のために」「どのような戦略に基づいて」設定されているかが不明確だからです。数字だけが独り歩きして、その背景にある戦略的な思考が抜け落ちているのです。

例えば、新製品のマーケティングを考えてみましょう。多くの企業では、いきなり「広告費500万円」「展示会3回出展」「営業訪問月100件」といった計画から始めます。
しかし、本来であれば「市場でのシェアトップを目指す」という戦略を立て、そのためのターゲットやアピールポイントを決定し、その戦略に基づいて広告の打ち出し方や販売戦略などの具体的な計画を立てるべきなのです。

戦略と計画を区別せずに進めると、目標の見失い、効率も低下し、成果も出なくなってしまいます。

◾️ 戦略先行のアプローチがもたらす効果

では、戦略を先に立てるとどのような効果があるのでしょうか?

明確な方向性の確立 

戦略を最初に定めることで、チーム全体が同じ方向を向いて取り組むことができます。迷いや混乱が減り、一貫した行動が可能になります。

効率的なリソース配分 

限られた時間、人材、予算を最も効果的に活用できるようになります。戦略に沿わない取り組みを排除し、重要なことに集中できます。

柔軟な対応力 

市場環境が変化したり、予期せぬ問題が発生したりしても、戦略という軸があることで適切な判断と対応ができます。

成果の測定と改善 

戦略に基づいた計画であれば、どの取り組みが戦略的目標にどれだけ貢献しているかを明確に測定できます。

実践的な戦略立案のステップ

では、実際にどのように戦略を立てればよいのでしょうか?以下のステップを参考にしてください。

  • ステップ1:現状分析
    まず、自社の現在の位置を正確に把握します。市場での立ち位置、強み・弱み、競合の状況、顧客のニーズなどを客観的に分析します。
  • ステップ2:目標の設定
    長期的に達成したい目標を明確にします。ここでの目標は、単なる数値目標ではなく、「どうなりたいか」というビジョンレベルの目標です。
  • ステップ3:戦略の選択
    目標を達成するための複数のアプローチを検討し、最も効果的で実現可能な戦略を選択します。この際、「何をするか」と同時に「何をしないか」も明確にします。
  • ステップ4:計画への落とし込み
    戦略が決まったら、それを実現するための具体的な計画を立てます。タイムライン、担当者、必要なリソース、成果指標などを詳細に設定します。
  • ステップ5:実行と調整
    計画を実行しながら、定期的に戦略との整合性を確認し、必要に応じて計画を調整します。

詳しい戦略立案のステップについても、以下の記事で説明しているので参考にしてください。
▶️ 戦略と計画の違いとは?成果が上がるマーケティング戦略立案と計画への反映方法を解説

◾️ 【事例】営業・マーケティングでの戦略的思考の実例

戦略があるのとない計画の、具体的な例を挙げて説明しましょう。

従来のアプローチ(計画先行)

  • 今月の売上目標:2000万円
  • 新規開拓:20社
  • 既存顧客フォロー:50社
  • 商談設定:30件

戦略的アプローチ

戦略:「中小企業向けのDXソリューション分野でNo.1のポジションを確立する」

そのための具体策: 

  • ターゲット:従業員100-500名の製造業
  • 価値提案:「3ヶ月で業務効率30%向上を実現」
  • 差別化:「製造業特化のカスタマイズ対応」

計画: 

  • 製造業向けセミナー開催(月2回)
  • 業界メディアへの記事掲載(月1本)
  • 既存顧客の成功事例作成(四半期3事例)
  • 製造業特化の営業資料作成

実際に戦略先行で大きな成果を上げている企業の事例を2つご紹介します。

事例1:地方の中小製造業A社の大転換

A社は従業員80名の金属加工会社でした。以前は「とにかく受注を増やす」という計画ベースの営業を行っていましたが、価格競争に巻き込まれ、利益率の低下に悩んでいました。

転換点となった戦略的アプローチ:

戦略:「医療機器業界の精密部品加工で唯一無二の存在になる」

戦略立案のプロセス:

  • 現状分析:汎用的な加工では差別化が困難
  • 強みの発見:創業者の医療機器業界での人脈と高精度加工技術
  • 市場機会:医療機器の国産化ニーズの高まり

戦略に基づく計画:

  • 医療機器認証(ISO 13485)の取得
  • 医療機器業界専門の営業担当者育成
  • 医療機器展示会への特化出展
  • 医療機器メーカーとの技術勉強会開催

結果: 

3年間で売上と利益率が向上。現在では医療機器業界で「精密加工といえばA社」という地位を確立しています。

重要なのは、A社が「受注を増やす」という漠然とした計画から、「医療機器業界で唯一無二になる」という明確な戦略に転換したことです。この戦略があったからこそ、すべての取り組みが一貫し、市場での独自のポジションを築くことができました。

事例2:IT企業B社の「選択と集中」戦略

B社は様々なITサービスを手掛ける100名規模の企業でした。「何でもできます」というスタンスで営業していましたが、競合が多く、差別化に苦戦していました。

戦略:「ECサイト運営代行で、売上向上率No.1の会社になる」

戦略の背景:

  • 市場分析:EC市場の急成長と運営の複雑化
  • 自社の強み:マーケティングとシステム開発の両方ができる
  • 競合分析:総合的なECサポートができる会社が少ない

「何をしないか」の明確化:

  • 一般的なWEB制作は受注しない
  • システム開発のみの案件は受注しない
  • ECに関連しないマーケティング支援は行わない

戦略に基づく計画:

  • EC専門チームの編成
  • ECサイト売上向上の成功事例作成
  • EC業界特化の営業資料とプレゼン作成
  • ECサイト運営者向けセミナーの定期開催
  • EC関連のブログ記事を週3回投稿

結果: 

2年間で受注単価が向上。リピート率も上がり、「ECならB社」というブランドポジションを確立。現在は大手企業からの案件も増加しています。

B社の成功の鍵は、「何でもできる」から「ECに特化する」という戦略的な選択と集中でした。この戦略により、限られたリソースを効果的に活用し、市場での明確なポジションを築くことができました。

◾️ 戦略実行時の「3つの落とし穴」と回避方法

多くの企業が戦略を立てても失敗する理由があります。実際に私がコンサルティングで見てきた「よくある落とし穴」を3つご紹介し、その回避方法をお伝えします。

落とし穴1:戦略の共有不足

経営陣だけが戦略を理解していて、現場スタッフには具体的な計画しか伝えられていないケースです。

回避方法: 戦略を分かりやすい言葉で全社員に共有し、なぜその戦略を選んだのかの背景も説明する。月次会議では必ず戦略との整合性を確認する時間を作る。

落とし穴2:戦略の頻繁な変更

市場の変化に敏感すぎて、戦略をコロコロ変えてしまうケースです。

回避方法: 戦略は1-3年のスパンで考え、計画レベルで調整する。戦略変更は年1-2回のタイミングに限定し、変更する場合は明確な根拠を全社に共有する。

落とし穴3:戦略と現実のギャップ

理想的すぎる戦略を立てて、現実的な実行計画に落とし込めないケースです。

回避方法: 戦略立案時に「本当に実行可能か?」を現場目線で検証する。3ヶ月ごとに戦略の進捗を確認し、必要に応じて計画レベルで調整する。

◾️ 戦略と計画の相互依存関係

戦略と計画は決して対立するものではありません。むしろ、相互依存の関係にあります。
戦略が長期的な目標と方向性を提供する一方で、計画はその戦略を具体的なアクションに落とし込み、実行に移します。戦略なしに計画を立てると、目標達成のための明確な方向性が欠けるため、単なる一連のタスクになってしまいます。

逆に、計画なしの戦略は、どれだけ素晴らしくても抽象的すぎて成果に結びつきません。
重要なのは、この両者を適切な順序で、そして連携させながら進めることです。

ビジネスの成功は、良い戦略とそれを実現するための効果的な計画の組み合わせによって成り立ちます。戦略がビジョンを提供し、計画がそのビジョンを実現するための具体的な道筋を示します。

多くの経営者や営業責任者が抱える「計画を立てても目標を達成できない」という悩みは、この順序を逆にしていることが原因です。まず戦略を明確にし、それに基づいた計画を策定し、実行する。この流れを意識するだけで、あなたの目標達成率は劇的に向上するはずです。

計画を立てる前に、一度立ち止まって考えてみてください。「なぜこの目標を達成したいのか?」「どのような戦略で臨むのか?」「この計画は戦略と整合しているか?」
戦略的に考え、計画を立てることで、目標達成への道が開けるのです。

明日からあなたも、計画の前に戦略を立てることから始めてみてください。きっと今までとは違う結果が待っているはずです。

この記事については以下の動画でも説明をしているので、参考にしてください。

このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。

執筆者

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典 

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