2026.01.09
人材開発

【BtoB経営者必見】人材が育つBtoB組織と、育たない組織の決定的な違いとは?育成を「設計」する仕組みづくりの勘所

BtoB企業の経営者やマネジメント層にとって、「次世代リーダーの育成」は永遠の課題です。

  • 「うちは少数精鋭だから、一人抜けるとガタがくる」
  • 「若手がなかなか育たず、結局自分が現場に出るしかない」
  • 「研修はやっているが、現場の行動が変わらない」

こうした悩みの本質は、実は「個人の能力」にあるのではありません。BtoB企業において人材が育つ組織と、そうでない組織の決定的な違い。それは、「属人的な背中」を見せるか、「再現性のある仕組み」を共有しているか、という一点に集約されます。

今回は、現場の知恵を「見える化」し、次世代リーダーが勝手に育つ組織のつくり方を深掘りします。

目次

1. なぜBtoB企業の育成は「ブラックボックス化」するのか

BtoBのビジネスモデルは、BtoCに比べてプロセスが複雑で長期にわたります。顧客との関係性、複雑な仕様の調整、商談の駆け引き――。これらは多くの場合、現場のベテランの「勘と経験」という名の暗黙知に頼っています。

「背中を見て覚えろ」の限界

多くの現場で起きているのは、ベテランが「俺の背中を見て盗め」と言い、新人が「なんとなく」真似をしてみるという光景です。しかし、今の時代、この手法は通用しません。

なぜなら、ベテラン自身も「なぜ自分がうまくいっているのか」を言語化できていないことが多いからです。
「感覚でわかるでしょ?」「現場の空気感だよ」
これでは、若手は何を吸収していいのか分かりません。結果として、属人的な業務フローに依存し、組織としての再現性はゼロになります。「人が育たない」のは、人のせいではなく、知恵がブラックボックス化している「仕組み」のせいなのです。

育成は「熱意」ではなく「設計」

研修を増やしたり、高名なコンサルタントを呼んでマインドセットを叩き込んでも、3ヶ月後には元通りになってしまう。そんな経験はありませんか?

それは、育成を「教育(伝えること)」だと捉えているからです。真の育成とは、伝えることではなく、「誰がやっても成果が出る仕組みを設計すること」です。この設計図がない限り、リーダーは育ちません。

2. 【事例】「技のレシピ化」が老舗企業を変えた

ここで、ある印刷会社C社の事例をご紹介します。創業50年のC社には、ベテラン職人による独自の「色調整術」がありました。しかし、それは完全に"勘"の世界。若手への指示は「もっとパキッとさせて」「深みを出して」といった抽象的なものばかりでした。

若手は正解がわからず1年で離職。品質も担当者によってバラバラという危機的状況でした。そこで社長が決断したのは、「技のレシピ化プロジェクト」です。

職人の「勘」を「数値」に変換する

具体的には、以下のステップを踏みました。

  1. 徹底的な可視化: ベテランの作業を横で動画撮影する。
  2. 因数分解: 「なぜ今、インクを足したのか?」「なぜその角度で刷るのか?」を言語化し、数値と理由で記録する。
  3. 共有の場づくり: それを「マニュアル」ではなく「レシピ」として若手に公開する。

最初は「企業秘密を晒すのか」と抵抗した職人も、若手が「なるほど!」と腑に落ちる姿を見て、自分の技が伝わる喜びに目覚めました。半年後には新人でも品質が安定し、クレーム率は30%減少。さらに若手から改善提案が出る「共有する文化」へとシフトしたのです。

3. 「ジャズバンド型組織」を目指せ

人材育成の理想形を例えるなら、それは「ジャズバンド」です。

  • オーケストラ型: 指揮者がすべてのタクトを振り、楽譜通りに演奏させる。指揮者がいなくなれば、音楽は止まってしまう。
  • ジャズバンド型: 「コード進行」という最小限の共通ルール(仕組み)がある。その枠組みの中であれば、各プレイヤーが状況に応じて即興演奏(アドリブ)を行う。

BtoBの現場は、常に変化する顧客の要望に応える「即興性」が求められます。経営者の真の仕事は、現場が迷わずに演奏できる「コード進行(共通言語とルール)」をつくり、あとは彼らに演奏を任せる環境をデザインすることなのです。

4. 【事例】「失敗の資産化」で自走する組織へ

IT受託開発のD社では、特定の人に依存する「属人化」が深刻でした。そこで社長が導入したのが、「失敗図鑑ミーティング」です。

失敗を責めるのではなく「検索可能」にする

月に一度、全プロジェクトの「しくじりポイント」を匿名で共有し、Notion等のツールに蓄積しました。

  • 見積もりが甘かった理由
  • クライアントとの認識ズレが起きた瞬間のメール文面
  • 納期遅延の真因

これを一元管理した結果、新人でも過去の失敗パターンを学べるようになり、1年後にはプロジェクト成功率が78%から92%へ向上しました。「失敗の資産化」こそが、強力な教育ツールとなったのです。

5. 次世代リーダーを育てる「3つの仕組み」

具体的に明日から何をすべきか。経営者が取り組むべきは、以下の3ステップです。

① 暗黙知を徹底的に「言語化」する

「なんとなくうまくいっていること」を分解してください。トップ営業マンに「なぜその質問をしたのか?」をしつこく聞く。そこに再現可能なパターンが隠れています。

② 知恵を「見える化」し、アクセスしやすくする

分厚いマニュアルではなく、「3分の動画」や「1枚の図解」を作ってください。新人が一人で悩んでいる時に、すぐにアクセスできる「知恵の倉庫」が必要です。

③ 仕組みを「定例化」して文化にする

「月1回の振り返り会」などを強制的にカレンダーに入れてください。ルールが定着することで、初めて「組織の文化」へと昇華します。


営業における戦略の立て方については以下の記事でも説明しています:
法人営業で成果を出す!BtoBマーケティングの本質とビジネスを加速させる3つの実践ポイント


経営者の仕事は「環境のデザイン」

部下が育たないのは、能力不足ではなく、彼らが育つための「楽譜」がないからです。現場の知恵を見える化し、失敗を資産に変える。そうして生まれた「ジャズバンド型組織」では、経営者がいなくても現場が自走し始めます。

■ プロセスを見える化しよう

具体例として「BtoB営業の初回商談」をモデルにした可視化ステップをご紹介します。

ステップ1:成果を「分解」する

商談の構造を「準備 → アイスブレイク → ヒアリング → 課題特定 → 提案 → 次のアクション」のようにフェーズ分けし、各フェーズの「ゴール」を明確にします。

ステップ2:暗黙知を「形式知」に変える

プロセス 凡事徹底(誰でもやること) ベテランの知恵(再現ポイント)
現状確認 予算や納期を聞く 「一番困っている瞬間はいつ?」と聞き、不便さの解像度を上げる
課題特定 自社製品でできることを言う 「解決しないと、来期はどうなるか?」と問い、放置のリスクを認識させる

ステップ3:3分間の「動画レシピ」を撮る

  1. 「お手本動画」: ベテランの実際のデモ実演。
  2. 「解説動画」: なぜあの時、あえて沈黙したのか?の意図解説。
  3. 「失敗再現動画」: 新人がやりがちなNGパターン。

ワークシート:貴社で書き出すためのフォーマット

  • ターゲットにする成果:(例:既存顧客からの紹介獲得など)
  • その成果の「核心」:(例:潜在的な悩みを引き出す質問力)
  • 再現するための3つのステップ:
    1. (例:商談前に仮説を3つ立てる)
    2. (例:開始10分は顧客の話に徹する)
    3. (例:最後に必ず「次回の宿題」を合意する)

「うちの会社の〇〇(業務名)を仕組み化したいけれど、どう分解すればいい?」という具体的なご相談には、特化した「見える化フォーマット」を差し上げます。問い合わせフォームからご連絡ください。

この記事については、以下の動画でも詳しく説明しています:

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執筆者:マーケティングアイズ株式会社 代表取締役 理央 周(りおう めぐる)

家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー等で新規事業・ブランド構築に従事。2013年〜2024年まで関西学院大学 経営戦略研究科 教授。著書は『売れない問題 解決の公式』など24冊。YouTubeでも最新情報を発信中。本名:児玉洋典

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