【BtoB経営者必読】「稼ぐ」オウンドメディアの作り方〜オウンドメディアを"リード獲得"に繋げる3つの設計原則

オウンドメディアは"集客装置"ではない──成果を出す企業がやっている"設計のちがい"
目次
オウンドメディアとは何か?──よくある誤解を解く
まず、オウンドメディアの定義を整理しておきましょう。
オウンドメディアとは、企業が自ら所有し、コントロールできる発信の場のことです。具体的には、自社Webサイト、ブログ、メールマガジン、YouTubeチャンネル、SNS公式アカウントなどが該当します。
ちなみに、オフラインのメディア──自社カタログやチラシ、店舗、営業員なども広義のオウンドメディアですが、この記事ではインターネットを活用したメディアを中心に解説していきます。
トリプルメディアの構造を理解する
マーケティングでは、メディアを3つに分類する「トリプルメディア」という考え方があります。
- ペイドメディア(Paid Media)
広告など、お金を払って露出を得るメディアです。リスティング広告、SNS広告、テレビCMなどがこれに当たります。即効性がある一方、費用がかかり続けます。 - アーンドメディア(Earned Media)
口コミやニュース、レビューサイトなど、第三者によって取り上げられるメディアです。信頼性は高いものの、自分たちでコントロールすることはできません。 - オウンドメディア(Owned Media)
自社が所有する情報発信の場。つまり、自分たちの意志と責任で「何をどう伝えるか」を決められる場所です。
この3つは、本来バランスを取って活用するものです。広告(ペイド)で認知を獲得し、口コミ(アーンド)で信頼を補強し、オウンドメディアでそれを自社の言葉に翻訳して蓄積していく。こうした統合的な設計が理想です。
多くの企業が陥る「集客ツール」という誤解
しかし、多くの企業がこの構造を誤解しています。
「オウンドメディア=広告を打たずに集客できる場所」と捉え、PV数やフォロワー数を追いかける。記事を量産し、SEO対策に躍起になる。でも、なかなか成果につながらない。
なぜでしょうか?
それは、オウンドメディアの本質が「集客」ではなく「信頼の蓄積」にあるからです。
SNSや検索エンジンのアルゴリズムは常に変化します。ある日突然、流入がゼロになることもあり得ます。しかし、自社サイトやメールマガジンという「所有するメディア」があれば、顧客と直接つながり続けることができます。
オウンドメディアは、企業の信頼を自ら積み上げていくためのプラットフォームなのです。
なぜ今、オウンドメディアが必要なのか
では、なぜ今、オウンドメディアの重要性が増しているのでしょうか。理由は大きく3つあります。
1. 信頼経済の時代になったから
現代の消費者や企業の購買担当者は、広告よりも体験談、レビュー、専門家の発信を信じる傾向にあります。
「何を言っているか」よりも「誰が言っているか」で選ばれる時代です。企業が一方的に発信する広告メッセージだけでは、信頼を獲得することが難しくなっています。
だからこそ、自社の専門性や価値観、顧客への向き合い方を継続的に発信し、信頼を積み上げていく必要があるのです。
2. 情報の主導権を取り戻すため
SNSも検索エンジンも、所詮は「借りものの場」です。
プラットフォームのアルゴリズム変更一つで、これまで築いてきた流入が一夜にしてゼロになることもあります。実際、多くの企業がSNSのアルゴリズム変更によって、大幅にリーチを失った経験を持っているはずです。
だからこそ、自社の土台=オウンドメディアを持つことが重要になります。外部プラットフォームへの依存を減らし、顧客との直接的な接点を確保する。これが、長期的に安定したマーケティングを実現する鍵です。
3. BtoBでも購買の70%は検索前に決まる時代
特にBtoB領域では、営業担当が接触する前に、顧客はすでに情報収集を終えています。
調査によると、BtoB購買プロセスの約70%は、営業との接触前に完了しているとも言われます。つまり、営業が訪問する頃には、すでに比較検討が進んでおり、候補も絞られているのです。
そのとき、自社のオウンドメディアが信頼される情報源として機能しているかどうか。これが営業の成果を大きく左右します。
成果を出すオウンドメディアの設計──3つの共通点
では、オウンドメディアで成功している企業は、何が違うのでしょうか。
私がコンサルティングで関わってきた数多くの事例をもとに、成果を出す企業の共通点を3つ挙げます。
共通点①:目的が明確である
成果を出している企業は、「PV数」や「フォロワー数」を追いかけていません。
もちろん、これらの指標がまったく無意味だというわけではありません。しかし、それらは手段であり、目的ではないのです。
彼らが見据えているゴールは、「信頼の醸成」や「営業活動の支援」です。具体的には、以下のような中間指標を設定しています。
- 資料ダウンロード数
- 問い合わせの質(商談化率)
- 営業担当が使える説明コンテンツの充実度
- リピート訪問率やメール開封率
つまり、オウンドメディアが売上に貢献する中間地点を明確に設計しているのです。
共通点②:コンテンツが「顧客の課題や疑問」から始まる
成果を出している企業のコンテンツは、「うちの会社が伝えたいこと」からスタートしていません。
スタート地点は常に、顧客が知りたいこと、悩んでいることです。
単純に製品やサービスの紹介をするのではなく、顧客インサイトや営業現場のFAQをもとに、記事・動画・事例紹介を組み立てています。
たとえば、
- 「なぜこの課題が起きるのか?」を解説する記事
- 「他社はどう解決しているのか?」を紹介する事例
- 「選定時に何を見るべきか?」をまとめた比較コンテンツ
このように、顧客の購買プロセスに沿った情報提供を行うことで、自然と信頼が生まれていくのです。
共通点③:メディアが「顧客の欲しい順番」に合わせて動線設計されている
もう一つ重要なのが、コンテンツ同士のつながりです。
成果を出している企業は、単発の投稿で終わらせません。「読まれる」ではなく「進む」設計がされています。
たとえば、
記事(課題認識) → 事例(解決イメージ) → 資料DL(詳細理解) → 問い合わせ(商談化)
というように、ストーリーラインで顧客を導く仕組みが構築されています。
1つのコンテンツが完結するのではなく、次のステップへ自然に誘導する。この動線設計こそが、オウンドメディアの成否を分けるポイントです。
実例:BtoB製造業のオウンドメディア改革
ここで、私が支援したBtoB製造業の事例をご紹介しましょう。
この企業は、展示会で多くの名刺交換をしていましたが、その後の商談化率が非常に低いという課題を抱えていました。営業担当が訪問しても、「検討します」で終わってしまうケースが大半だったのです。
そこで私たちが提案したのが、営業の代わりに説明してくれる記事を作ることでした。
コンテンツのテーマは、営業ヒアリングと顧客アンケートから抽出した「現場の困りごと」から逆算して設計しました。
- なぜこの製品が必要なのか
- 導入時によくある失敗とその回避策
- 他社との比較ポイント
- 実際の導入事例と成果
これらを体系的に整備し、展示会後のフォローメールで関連記事を案内。興味を持った見込み顧客が自発的に情報を深掘りできる仕組みを構築しました。
結果はどうだったか。
半年後、営業経由の問い合わせのうち、半分以上がオウンドメディア経由の見込み顧客になったのです。しかも、これらの見込み顧客は、すでに製品理解が進んでいるため、商談化率も大幅に向上しました。
つまり、オウンドメディアが売る前に信頼をつくる仕組みとして機能したのです。
まとめ:オウンドメディアは「資産」である
オウンドメディアは、「見られること」がゴールではありません。信頼されることがゴールです。
発信を「広告」ではなく、「資産」として積み上げる。ここにマーケティングの本質があります。
最後に、今日のポイントを3つにまとめます。
- オウンドメディアは信頼資産を作る場所
集客数より、信頼の深さを追求する。 - 顧客起点でストーリーを設計する
自社が言いたいことではなく、顧客が知りたいことから始める。 - 目的は集客ではなく関係構築
一度きりの接触ではなく、長期的な関係性を築く仕組みを作る。
あなたの会社の発信は、「誰の」「どんな悩み」を解決していますか?
この問いから、オウンドメディアの設計を見直してみてください。成果につながるヒントが、必ず見つかるはずです。
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執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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