BtoBビジネスのブランディングとは?3つの誤解と価格競争から脱出するブランド設計の方法

【BtoB経営者向け】価格競争から脱出する!ブランディング3つの誤解とブランド構築3ステップ
BtoBビジネスにブランディングは必要でしょうか?
「うちもブランディングに力を入れよう」。 と、広告予算を組んだり、ホームページを作り替えたりしたけれど、 「結局、売上にはどう繋がったんだ?」と、 疑問に感じる経営者、事業責任者の方から相談をいただくことが増えてきました。 中でも、BtoBの製造業やIT企業、2ndステージのスタートアップ企業からの問い合わせが増えています。
一方で、多くの企業が、ブランディングについて致命的な誤解をしています。本来やるべきブランディングをやるには、この誤解を解き、段階的に構築していくことが必須です。
この記事では、
- ブランディング3つの誤解
- 本当のBtoBブランディングとは何か
- 価格競争から脱出するBtoBブランドの作り方(3つのステップ)
について説明します。
最後まで読んで、あなたの会社が「価格ではなく、価値で選ばれる」ための具体的なロードマップを手に入れてください。
目次
❌ 誤解1:「ブランディング=カッコいいロゴやデザインを整えること」
まず、3つの誤解のうち、1つ目です。 「ブランディング=ロゴやデザインの統一による見た目の整備」 この誤解は、BtoC企業の華やかな広告を見て、ルックスだけを真似しようとしてしまうことから起こります。
なぜこの誤解が起きるのでしょうか?
私たちが目にするロゴとかデザインは、ブランディングというマーケティング戦略のごく一部に過ぎません。ロゴやデザインは、あくまで戦略に基づいた戦術を「視覚化」したものであり、ブランディングの手段であって本体ではないのです。
BtoBのブランディングの本来の目的は、「顧客の心の中に、競合とは違う、独自のポジションを確立すること」です。
特にBtoBは相手が会社なので、論理や信頼が重要です。 あなたの会社の技術やサービスが、「顧客の事業にどんなポジティブな変化をもたらすか」という独自の顧客提供価値(=バリュープロポジション)を、社内外に一貫して伝え続ける仕組みこそがブランディングなのです。
「ロゴを変えただけでは売れる」わけもありません。
「独自価値をはっきりさせ、それをロゴやWebサイトに反映させることで、信頼できる会社だと認知される」という順番で組み立てるのが必要です。
本来のブランドマネジメントおよびブランド構築について以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
❌ 誤解2:「BtoBにブランディングは不要。ロジックが全てだ」
次に、2つ目の誤解です。
「ブランディング=BtoCのもの。ロジックが重視されるBtoBにはブランディングは不要ですよね」
確かにBtoBは、個人向けビジネスで重要なユーザーの「楽しい」「可愛い」といった感情で購買の意思決定がされるわけではありません。
BtoBの意思決定には、平均で7人〜10人が関わると言われています。稟議書を上げる担当者は、「この会社を選んで失敗しないか?」という不安を必ず持っています。
この関与者の不安を取り除くのが、BtoBブランディングの主目的です。
認知されていない無名な会社からの提案に対して、窓口担当者は「価格」と「スペック」で判断するしかありません。しかし、ブランド力のある会社からの提案に担当者は「業界で品質の担保に強い会社」として社内に説明でき「なぜこの会社なのか」を上層部に自信をもってプレゼンできます。
得意先は「スペック」や「品質」は良くて当たり前、と考えます。BtoBのブランディングとは、この大前提を超えて、「この会社と取引すれば、未来の事業目標が達成できる」という確信を、意思決定者たちに持たせるための戦略なのです。
❌ 誤解3:「ブランディング=短期で効果が出ないコスト、贅沢品」
3つ目の誤解は 「ブランディング=短期で効果が出ない施策、なのでコストモカカリ緊急性が低い贅沢品」 という思い込みです。
ブランディングにかける資金を、コスト・経費だと考えてしまうのです。 ブランディングは、明日から売り上げが上がる"短期的な施策"ではなく、未来の売上を築くための先行投資なのです。
そして、その効果は測定できるのです。その指標は、売り上げや受注率といった営業でのKPIではなく、ブランディングの効果を図る実利的なKPIを設定するのです。
ブランディングの効果測定に有効な「実利的なKPI」
- 非価格競争率: 新規受注のうち、「価格交渉がほとんどなかった」案件の割合。(値決め力の向上)
- 指名問い合わせ率: 競合比較ではなく「御社にぜひお願いしたい」と指名で入ってきた問い合わせの割合。(優位性の確立)
- 営業プロセス短縮率: 初回の接触から受注までの平均期間の変化。(営業効率の向上)
これらの指標を設定し効果測定することで、ブランディング投資が正しく機能し、確実に未来の収益に貢献しているかを判断すべきなのです。
✨ 本当のBtoBブランディングとは?(方程式と社内の重要性)
あらためてBtoBブランディングを明確に定義しましょう。
BtoBのブランディングは『誰に』『何を』『どう証明し』『どう届かせるか』を組織で"一貫"させる仕組みです。
ブランディングを方程式で表すと以下のようになります。
- 認知: 指名検索・想起
- 信頼: 事例・SLA(サービス水準合意)・第三者評価
- 差別化: 比較軸の設計("速さ"か"確実性"か"TCO"か)
- 再現性: プロセス・教育・品質保証
特に社内の一貫性(インターナルマーケティング)が重要です。全社員が"同じ一言"で語れる状態を目指しましょう。
🎯 価格競争から脱出するブランド構築3ステップ
ブランド構築は、"気合い"や"感性"ではなく、"設計"です。 構築のポイントは、「一言」、「証拠」、そして「一貫運用」です。
1. 「一言」価値提案を決定する
まず、自社の存在意義を「ひと言」に言語化することから始めましょう。
- 顧客の進歩(Jobs)を一文化:
お客様は、あなたの製品が欲しいわけではなく「前進したい」のです。その「進歩したい願い」を具体的に、一言で表します。
- 製造業でいえば、「新しい設備が欲しい」じゃなくて、「工場停止を30分以内に復旧したい」とか、「保守コストを下げたい」じゃなくて、「年間保守コストを10%削減したい」といった、具体的な"進歩の願望"に落とし込みます。
- 代替手段と未充足を並べる:
顧客がその進歩を達成するために、今どんな手段をとっていて、そこにどんな不満(未充足)があるかを明確にします。
- 「今外注保守を使っているけど、到着が遅い」。「社内でやろうとしているけど、一次切り分けに時間がかかりすぎる」。この"未充足"こそが、あなたの会社が入り込むべき隙間です。
- 自社の優位性を一言に凝縮:
自社だけが、その未充足をどう解決できるのかを、数字付きで一言に凝縮します。
- 例えば、「現場で完結。一次切り分けを10分短縮」といった具合です。
このステップのアウトプットは、20字以内の一言価値提案です。そして同時に、「やらない案件の基準」も決めてください。「全部のお客さまに効く」表現は、結局誰にも刺さりません。ターゲットを絞ってこそ、一言は鋭くなります。
2. 「証拠」を固めて「不安」を取り除く
「一言」が揃ったら、次はそれを裏付ける**「証拠」の整備**です。顧客の不安を取り除くには、実績と論理が必要です。
- **事例の再構築:** 「何を納品したか」ではなく、「顧客の進歩をどう達成させたか」を軸に事例を書き直します。先のKPIで言う「指名問い合わせ」につながるよう、競合が真似できないプロセスや数字を盛り込みます。
- **第三者評価の獲得:** 業界の認証、メディア掲載、顧客からの推薦文などを体系的に収集し、「他者からの評価」という最も強力な「信頼」を積み上げます。
- **Webサイトの再設計:** 価値提案と証拠が、**トップページからすぐに伝わる**ようにデザインと構成を見直します。
3. 「一貫運用」でブランドを定着させる
「一言」が指名を生み、「証拠」が不安を取り除き、「一貫運用」が競合との差を圧倒的に広げます。発信するメッセージと社内の意識を統一させます。
- **社外向け発信の統一:**
Webサイトのファーストビュー、提案書の表紙、展示会のパネル、そして営業トーク。全てに、「一言価値提案」と「事例No.1の数字」を、同じ配置で組み込んでください。チャネルごとに"言い方を変える病"が再発すると、ブランドの浸透は遅れます。徹底的な一貫性が、信頼を築きます。
- **インターナルマーケティングの徹底:**
社内報や朝礼などで、**「一言価値提案」を日々の業務にどう活かすか**を全社員に浸透させます。社員一人ひとりが「自社の独自価値」を体現できて初めて、ブランドは本物になります。
💡 まとめと次の行動
「ブランド構築はコストではなく、未来の収益を作る先行投資である」
この設計図通りに動けば、あなたの会社は、価格競争から確実に脱出し、取引先にとって必要不可欠な存在になれるはずです。
さあ、いますぐ、この記事を読み終わったら、**あなたの会社の「顧客の進歩の願い」を20字以内で書き出してみてください。**行動あるのみです。
この記事については以下の動画でも説明していますので、参考にしてください。 ⬇️
◾️ 執筆者
このブログでは、マーケティングや営業に役立つ記事を掲載しています。 他の記事も読み、ビジネスの参考にしてください。
執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
マーケティングを自社に取り入れたい、営業チームを活性化したい、新しいビジネスを軌道に乗せたいなど、この記事やマーケティングについて知りたいこと、聞いてみたいことは、マーケティングアイズ株式会社のフォームからお気軽にどうぞ(以下をクリックください)
