未来の利益を確保するBtoB経営戦略としてのLTV〜Life Time Value思考:組織に浸透させ「仕組み化」する方法

【BtoB経営者へ】順調な会社ほど危ない!LTV教育が「未来の安定」を保証する
目次
今の「順調」は10年後も続きますか?
盤石な会社、キャッシュも利益も積み上がっている。経営者として、これほど嬉しいことはないでしょう。
しかし、その「順調」は本当に10年後も続くでしょうか?
多くの順調な企業が陥る落とし穴があります。それは、今の成功が「個人の能力」や「たまたまの市場環境」に依存していること、そして何より、そこに気づかないことです。
次の成長と未来の安定を保証するためには、今すぐ全社員の意識を変える投資をしなければなりません。具体的には、LTV(顧客生涯価値)を軸にした社員教育です。
LTVの本質:それは「畑の哲学」である
LTVというと、「顧客が生涯で落としてくれる金額」という計算の話に聞こえるかもしれません。しかし、本質はまったく逆です。
LTVとは、「お客さんとどんな関係を育てたいか?」という、会社の姿勢そのものなのです。
一度売って終わりなのか?買った後も向き合い続けるのか?短期の利益を取るのか?長く選ばれる価値を積み上げるのか?この自問自答の積み重ねが、LTVをつくります。
つまりLTVとは、画面の中の数字ではなく、「うちの会社は、顧客とどんな関係づくりを大事にするのか?」という経営の哲学です。だからこそ、再現性のある経営の軸になるのです。
もちろんビジネスである以上、利益を出すことが必須です。なので、LTVとは「顧客と自社との関係性が、長期的に見てどれだけの利益を生むか」ということになります。
「焼き畑農業」vs「持続可能な農業」
私はこれを「畑の哲学」と呼んでいます。
LTVの考え方がないまま経営すると「焼き畑農業」になってしまいます。次々と新しい顧客(畑)を開墾し、目の前の受注(その時の収穫)を得る。そのときに、土壌をほったらかしにして使い捨てる。また次の畑を探すために多額の広告費や営業コストを燃やす。これだと、市場が枯れていくし、競合が出てきて開墾コスト(CAC)が上がった瞬間に、会社は立ち行かなくなります。
一方で、LTVを重視する企業は、「肥沃で持続可能な畑」を作る農業です。既存の顧客(土壌)を丹念に耕し、手入れすることで、安定した、より大きな収穫(継続的な契約、大型のアップセル)を生み続ける。
営業が目の前の売上ばかりに気を取られると、焼き畑農業みたいになって、売上はあるけど利益が残らないという状況に陥ってしまいます。
「属人化」という最大のリスク
順調なBtoB法人営業ほど、トップセールスに頼りがちです。スーパー営業の「提案力」や「顧客との信頼関係の築き方」が売上を高めている。
しかし、もしそのエースが退職したら?あるいは、彼と同じレベルの社員が育たなかったら?その瞬間に、企業のLTVは大きく下落します。
ある老舗企業の失敗事例
ある老舗の金属加工メーカーでの出来事です。エース営業1名が、大手顧客と強い個人的な信頼関係を持っていました。しかし、その営業が家庭の都合で急に退職。
その結果:
- 顧客との連絡窓口が不在
- 技術部と顧客の間に、仕事の「翻訳」ができなくなる
- 後任が関係を再構築するのに1年以上かかる
継続案件が3割ストップし、翌年のLTVは約半分に低下しました。会社は痛感したのです。「売上ではなく、"関係"が個人に属していた」と。
LTV思考を組織の資産にする
このLTV思考を組織に浸透させることは、トップエースの「属人的な成功」を、全社で共有できる「組織の資産」にする、最も確実な戦略です。
LTV思考が根付くと、全社員が「顧客企業の経営課題を深く理解し、その解決のために長期的に貢献する」という目的意識を持って動けるようになります。
ITソリューション企業の成功事例
あるITソリューション企業では、トップ営業マンAさんのLTVが、他の社員の3倍でした。そのAさんの「単なる製品説明ではなく、顧客の5年後の成長計画に合わせてロードマップを描く提案」という行動様式を、LTV浸透プログラムを通じて全営業マンの標準プロセスとしたところ、平均LTVが20%向上しました。
水面下で進む「静かな離脱」
今順調でも、現場の社員の意識が「短期の売上」に偏っていると、水面下で顧客の離脱リスクが温存されていきます。
BtoBでは、この離脱リスクは小さな不満を放っておくことから生まれます。例えば:
- 営業が「とりあえず今回の契約を取る」ことを優先
- 契約後、サポート部門がLTVを意識せず、顧客からの問い合わせを「単なる作業」として処理
- その後のフォローがない
この放置された小さな不満が、契約満了の数年後に「静かな離脱」という形で現れ、利益がジリジリ下がるのです。
LTV思考を浸透させることで、営業部門だけでなく、サポート、開発、すべての部署の社員に、「自分の仕事は顧客の信頼と継続にどうつながっているか」という長期的な視点を与えます。
「売り手」から「パートナー」へ
LTV思考が浸透した法人営業は、単なる「商品の売り手」から、「顧客企業の未来を共に創るパートナー」へと進化します。
彼らは、目先の契約金額ではなく、「このソリューションを長く利用することで、顧客企業の事業がどれだけ飛躍するか」という「未来の価値」を語れるようになります。
具体例:システム会社の場合
一般的なシステム会社が「機能と価格」で勝負しがちなところ、LTV思考の企業は違います。
「このシステム導入で、御社の3年後の人件費を12%削減し、それをR&Dに投資することができます」
このように、顧客の未来の経営戦略に食い込む提案をします。この「未来の価値」を提示し、長期的な関係を構築できる営業こそ、高単価でも選ばれるのです。
LTV思考を浸透させるということは、単なるスキルアップではありません。社員が自社の提供価値を定義し直し、ブランドをプレミアム化することで、長期的な利益を保証する、最高の戦略的投資なのです。
教育はコストではなく、投資である
社員を教育するのはコストではありません。それは、「未来の安定」という最も高価な資産を購入する行為です。
「今の利益を守る最善策は、未来の利益を生む社員を育てること」。これが私の結論です。
業績は落ち始めると、止まりません。順風満帆な今だからこそ、次の10年、20年の盤石な経営基盤を構築する投資が必要なのです。
LTVを最大化し、持続的な成長を実現するための具体的な教育プログラムにご興味があれば、ぜひお問い合わせください。
この記事については、以下の動画でも説明しています。参考にしてください
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執筆者
家電メーカー、石油会社、大型車両メーカー、高機能フィルムメーカー、建築部品メーカーなどに、新規事業立ち上げ・ブランド構築のコンサルティングと、顧客視点の顧客文化にするマーケティング社員研修を提供。 2013年より2024年まで、関西学院大学 経営戦略研究科で教授を務める。
著書は「売れない問題 解決の公式」(日本経済新聞出版)など国内外で24冊。米国、台湾、香港など海外でも講演。テレビ、ラジオの出演や新聞・雑誌への寄稿も多数。YouTubeでも最新のマーケティング情報を発信中。 本名 児玉洋典
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