Marketing i's [マーケティングアイズ]

マーケティングはサイエンス(科学)に基づいたアート(芸術)である

顧客ブランド養成講座
収益を好転させるマーケティングとイノベーション

カテゴリ:「マーケティング」の記事

前の5件 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11

ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11 バイロン・シャープ著

IMG_5249.JPG

私の専門分野であり、関西学院大学の経営戦略研究科(ビジネススクール)でも教えている、ブランドマネジメントの参考にしたく、評判の高いこの本を読んでみた。

まず、興味深いのは、フォリップ・コトラーのマーケティングマネジメントを従来のマーケティングと位置付け、
著者の考え方を中心としたブランドマネジメントと比較している点。

なかでも、マーケティングマネジメントは差別化を重要とするが、
ブランディングでは「独自性」を出すべきだと主張する。

独自性とは、Salience(セイリエンス)を持つこと。
聞き慣れないセイリエンスとは、直訳をすると区別されたという意味になるので、
他にない、自社だけのことで勝負すべきだ、
ということになる。

ブランドマネジメントはここ数年、再評価されている。
単なる手法ではなく、事業戦略として位置付けるべきだ、ということだ。

その背景には、SNSの浸透などで消費者の行動が見える化されて、
「自分にとっていいもの」を人たが選ぶ時代になり、
「共感」でモノを買う時代になってきた、という点がある。

差別化は、サイズや価格など目に見える機能的な価値で勝負すること。
一方で、独自化は「自分に関係あるな」という距離感などの情緒的な価値での勝負になる。

差別化を「ライバルより良いモノを作ること」とすれば、
独自化は「ライバルよりも"価値があると認識"されること」になる。

その意味でも、独自化の重要性についての部分は大いに参考になる。

もう1点は、ブランディングのキモが2つある、それは、
メンタルアベイラビリティと
フィジカルアベイラビリティだ、
ということ。

アベイラビリティという言葉は、日本語英語ではないので、
私も初めて聞いた時(1990年のことだった)には、わかりづらかったが、
「ユーザーにとって身近にあるかどうか」というような意味だ。

前者は、自社がいる業界やカテゴリーで1番に思い出してもらえること。
後者は、買いたいと感じた時に、便利に買うことができるかどうか、ということ。

想起され、利便性が高いことが重要だ、
とのこと。

ブランドマネジメントの目的は「ファン(=ロイヤルユーザー)になってもらって、
継続して買ってもらうこと」

そのためにも、この2点は重要なのだ。

この考え方は、消費財のマーケティングのみではなく、
生産材を扱うような、BtoBのビジネスでの営業にも当てはまる。

多くある競合の中から、一番に思い出してもらえる営業をする、
また、いつでもどこでも自社の製品やサービスのことを、
聞けたり、見積もり依頼をしたり、注文できるようにしておく、
というのも「アベイラビリティ」なのだ。

この本は、私のようなマーケティングの専門家にとって大きな刺激になる。
さらに、これからマーケティングを学ぶ、ブランディングに興味がある、
という方にも、分かりやすくシンプルにまとめてあるという点でおすすめだ。
さらにいうと、
この本で比較されているマーケティングマネジメントの考え方と、
ブランディングの大家のデビット・アーカーのの本をまず読んでから、
この本を読むと、自社にとって何がマッチしているのかが理解できるだろう。

いずれにしてもおすすめの一冊です。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

New! 売れない問題を根っこから解決する「売れる仕組み」を
動画で身につける
⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ 
「できる!マーケティングまるごと講座」on Udemy

コロナ禍の今、会社を"中から"変革したい経営者の方
社員を「戦略リーダー」にしたい経営者・人事責任者はこちらから:

☆ 売れる仕組みを「対面」で身につける→ 社員教育.com 
☆ 売れる仕組みをどこにいても学べる LBTオンライン

マーケティングはサイエンスなのか?アートなのか?打ち手が当たらない理由とは?

「マーケティングは「サイエンスに基づくアートだ」と、私は考えている。

マーケティング活動は、
準備〜情報収集、分析、市場機会の発見
計画〜事業コンセプト、目標設定、戦略、戦術
行動〜PDCA
の3つから成り立つ。

この中で、市場にいる人や企業から"見える"のは、
テレビCMやネット広告、ホームページなどの自社メディア、
PR、SNSでの投稿などといった、
マーケティング・コミュニケーションの部分。

この部分が「アート」なのだ。

マーケティング・コミュニケーションは、
キャッチコピーなどの言葉と
画像や動画、デザインなどのイメージ
の、組み合わせで成り立つ。

広告キャンペーンのキャッチコピーは、
統計学や心理学から割り出すものでもなく、
リサーチを駆使しても、いいものができるとは限らない。

ある時はふざけながら、時に真剣に、
笑い合ったり、会議の中でだったり、
コピーライターや、デザイナー、クリエイティブ・ディレクター、
といった人たちが紡ぎ出すアート。

なので、いい広告というもができても、
「売れる広告」になるとは限らない。

あたりもハズレもある。

むしろ、外れる確率の方が高いかもしれないし、
鉄板の「魔法の法則」などあるわけもない。

では、適当にやればいいのか、というとそうではない。

当たる確率を最大限に上げるために、
情報収集、調査、分析をし、
そこから気づきを得て、仮説を立て計画を立てる。

ここに、フレームワークや理論、統計といった、
「サイエンス」を駆使するのだ。

マーケティングは、当たる確率が低い、
けれども、愛すべき"アート"。

それをサイエンスが、微力ながら支えることで、
当たる確率を上げる。

なので、アート8割、サイエンス2割、
というのが最適のバランスだと感じている。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

New! 売れない問題を根っこから解決する「売れる仕組み」を
動画で身につける
⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎ 
「できる!マーケティングまるごと講座」on Udemy

ブランディング 中村正道氏著 ブランディングの重要性と小さな誤解


この本の帯に「ビジネスの高収益を実現する極意」
とある通りに、マーケティングの分野の中でも、ここ数年来ブランディングは重要だ、ということが浸透している。

一方で、ブランディングが正しく理解されていないという現実もある。

ブランドを構築し、企業価値を高め、製品の売り上げに貢献し収益を出していく
という一連の流れの中で、ブランドコンサルティングする会社として最も有名な、
インターブランドジャパンの方の著作なので、読んでみた。

この本では、

  • ブランドとは何か、
  • その必要性、
  • どうやってブランディをマネジメントしていくのか、
  • ブランディングの核になるのは何か、
  • ビジネスとブランドと理念の関係、
  • そしてブランディングをどのように推進し、
  • どう効果測定していくのか、

という流れが、ステップバイステップ、段階を踏んで、
実際の理論と、インターブランドのフレームワーク、
そして企業の実際の事例とともに説明されている。

私は、ブリティッシュアメリカンタバコや、
アマゾンでブランドマネージャーをしてきた実務担当者として、
製品や企業そのものの価値を向上させていくことをやってきた。

その経験から、ブランドマネジメントは、単なる手法論ではなく、
事業戦略として、会社で進めていくべきものだと考えている。
その私が読んでも、この本はより深く広い領域までカバーしているし、
核心をついていると思う。

特に、インターブランドが提唱する4つのクアドラントモデルで、
スターバックスの事例を説明している点が特に腑に落ちた。

スターバックスは、TVCMのようなマスメディアでの広告や、
SNSのプロモーションのような、いわゆる"通常の"販売促進を行っておらず、
経営理念(ミッション)をもとにして、店頭そのものが彼らの最大の強みであり差別化ポイントであるということを利用し、おもてなし含めて今の業界で地位を築いている。

それを持って、ブランディングと一般的なマーケティングコミニケーションとの違いを説明する中で、ブランディング=広告コミニケーションだという誤解である、と論じている。

メディアが多様化して、情報が氾濫する今、ほんの数年前まで主流だったマーケティングコミュニケーションが、効かなくなってしまうことは日常茶飯事だ。

このような状況だからこそ、自社や製品をブランディングすることの重要性がますます高くなっている。
手法の変更などで終わることなく、ブランディングの根っこを理解して初めて、、売れる仕組みが完成する。

その意味でも、マーケティングや営業に関わるビジネスパーソンはもちろん、企業経営者、スタートアップの代表、これからビジネスを起こそうとする起業家にとって一読の価値のある必読書だ。

 

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

☆ マーケティングをメールマガジンで学ぶ→  売れる仕組み研究メルマガ

マーケティング コミュニケーションで体験価値を表現する 名古屋 星が丘製麺所のすだちキャンペーン

名古屋市にある星が丘製麺所は、星が丘テラスのTHE KITCHENにあるきしめん専門のお店。
私も好きでよくランチに行くのだが、平たくてかなり太い麺が特徴。
喉越しがいいし、麺のかたさも腰があってちょうどよく、喉をつるっと通る。

つゆは、白つゆと赤つゆがあり、さらに温かいものと冷たいものが選べる。

どちらも美味しいが、特徴はあっさとりしているけども、しっかりとうまみがある点。
このつゆと太めの麺がぴったりマッチしている、という感じ。

中でも特に好きなのが、
こちらの太門(たもん)という、すだちが乗っているきしめん。

基本は、白つゆにすだちとネギが乗っている。
この時期は、これを冷たいつゆで食べるのがイケる。

先日も、ランチタイムに行ってみたら店員の方に、
「今、キャンペーンをやっていてこの太門(たもん)を注文いただくお客様には、
すだちを2個おつけしているんです」
とのこと。

頼んでみたら、しっかりと包装された巣立ちが2個いただけた。

さらにつけてくれたのが、このレシピ。


すだちを使った料理やスイーツのレシピがついている。

反対の面には、詳しいレシピ集が載っている。

すだちは、すだちだけで食べることが少ない料理の「素材」。

なので、単に"すだち"として売っていると、すだちとして見られてしまう。
しかし、このように「その使い方」までを教えてくれると、
もらった側は、有効な使い方、というかすだちの「活用方法」がわかることになる。

そして、その料理が美味しければ、次にまた買ってみよう、という気持ちになる。
すだちの市場が広がることに、一役買っていることになるし、
気に入ってもらえれば、継続の商売にもなる。

顧客が欲しいのは、すだちではなく「すだちを使った美味しい料理」なのだ。
そしてそれこそが顧客が感じる価値ということになる。

マーケティングコミュニケーションでは、このように顧客価値を表現することが重要。
このレシピ集は、その顧客価値を「残る」形で提供している。

この考え方は、法人営業にも当てはまる。
素材や半完成品を、得意先に納品するような業態の法人営業では、
自社製品の特徴だけを売り込んでも、顧客には響かない。

自社製品を使って、得意先が「何ができるか」という自社製品の先を見せないと、
顧客のニーズを顕在化させることができないのだ。

毎回毎回、新規の顧客をとらなければならない、
その新規顧客がなかなかとれない、
という売れない問題を解決するには、
「単に製品を売っていないか」
「顧客価値を提供できているか」
「継続の商売になっているか」
という点を確認することから始めるといい。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

☆ マーケティングをメールマガジンで学ぶ→  売れる仕組み研究メルマガ

即買いされる技術キャッチコピーは売りが9割コピーライター弓削徹さんの著書

営業やマーケティングの実務担当者が、
ホームページやチラシ、カタログなどを作るときに、
意外と悩むのがキャッチコピー。


一方で、本来悩むべきところとは、
「違うポイント」で悩んでいる場合も多いのが事実。


「文字数が多くなってしまった」
「漢字が多くなってしまう」
「かっこいい言葉が思い浮かばない」
といった具合です。


しかし、マーケティングコミュニケーションにおいて、
まず考えなければならないのが、
自社だけが顧客に提供できる強み、
すなわち"ウリ"ということになる。


この本の帯にもあるように、
自分の製品やプロダクトやサービスの強み、違い、
すなわちウリをどうやって見つけるのか、
それをどう伝えるのか、
が、本来まずさいしょに悩むポイントだ。


著者の弓削徹氏は、
製造業に特化したマーケティングコンサルタントであり、
かつ、コピーライターの経験もある二刀流で、
どちらもいける方だ。


以前書かれた「キャッチコピーの極意」という本が、
使えるコピーライティングの本ということで有名なので、
この本も読んでみた。


こちらの本は、サブタイトルにもあるように、
自社製品やサービスのウリを、どう見つけていくか、
そしてそれをどうキャッチコピーとして表現していくか、
について、ステップを踏んで書かれている。


マーケティングを学ぶ段階で、
本を読んだりセミナーにいったりすると、
まずは、「強みを書きましょう」、
「違いを出そう」とよく言われるはず。


しかし「そうは言ってもなかなか難しいですよね」
というのが、多くの人の本音だろう。


同時に、自社の強みはあまりにも自分に近いところにありすぎて、
実務担当者には見えてなかったり、
気づいていなかったりすることも、よくある。


このような実務家たちの悩みや盲点について、
「ここを押さえましょう」
「この点に気づきましょう」というポイントを押さえて、
段階的に説明しながら、
キャッチコピーの書き方を説明しているのが、
再現性が高いと言える。


例えば、まずニーズがあり、
次に、より具体的な「ウオンツ」になる。
そしてウオンツを持っている人たちの中で、
どうしても欲しい、必要だ、
と考えている人がいると著者は説く。


すなわちニーズは市場の大きさ、
ウォンツはその具体的な欲求、
そして著者がいう、"切実"すなわちデマンドとは、
買う直前や、意思決定をする前に、
価格がいくらだとか、
実際にその製品やサービスを購入した後に、
自分にとって効用があるのかどうかということを考えることになる、


それを著者は「切実」と呼んでいるところがわかりやすくていい。


ひとことに「ウリ」といっても、
製品の機能的な特徴や、
スペックについての優位性を考えてしまう人多いが、
著者が言っているウリとは、
顧客が使用時や後に感じる価値や効用、
すなわちベネフィットを指す。


そこを著者は、製品の効用や、使用感や効果を見つけ、
それをウリとせよと言っているのだ。


このコンセプトをベースに、著者はこの本の最後に、
ワークシートをつけている。


このワークシートは、いくつかの部分に分かれているのだが、
中でも良いのは、まず自社のウリについて、
棚卸しをすることを勧めているところだ。


研修やセミナーでワークシートを使う講師の方も多いが、
受講者からすると、
「いきなりウリを見つけてください、と言われても、
そう簡単にはできないよ」と言うのが本音だと思う。


まずはすべて棚卸しして、そこから整理整頓をしていく方が、
抜け漏れやダブりもなく、
また自分の頭の中の思考の見える化にもなる。


その意味でも、再現性の高い1冊だ。

マーケティングアイズ株式会社 代表取締役
関西学院大学 経営戦略研究科 教授

理央 周(りおう めぐる)

前の5件 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11